2月18日、英国の多くの新聞にジャイルス選手の快挙が掲載された。World Athletics Indoor Tourに参戦し、フランス、ドイツの大会で自己ベストを更新しいずれも優勝、今回のポーランドでの大会では1分43.6秒でコー選手が持つ英国記録を破り、室内の800mの記録では世界歴代2位の記録である。2月24日にはポルトガルでシリーズ最終戦があり、シリーズ優勝をかけた戦いが続く。
英国での最初のロックダウンの最中、本校の400mトラックを走る見知らない若い英国人二人の姿があった。ロックダウンの最中であり、ここは学校の私有地であるから、練習はできないことを伝えると、残念そうに帰っていった二人の姿が思い浮かぶ。しばらくして、正式に英国陸上協会から本校にトラック使用のお願いがあった。ロックダウンで、各地の陸上競技場が閉鎖される中、練習場所に窮した選手のために本校の陸上トラックを貸し出した。将来性のある若い陸上選手たちが本校のトラックで練習する姿に、ロックダウンで学校が閉鎖された無念な生徒諸君の顔が浮かび、涙が溢れた。それがジャイルス選手との出会いだった。彼のコーチはビッグスさんだ。最初の練習の時に見学に行った。そこでビッグスコーチと共に選手を指導していたのが、1992年バルセロナオリンピック女子400mハードルのゴールドメダリストのサリーガネルさん、ビッグスコーチの奥様だった。
それ以来、ロックダウンの最中本校のトラックで練習する選手たちの練習を応援した。生徒は誰もいなかったが、生徒と共に応援している気分だった。生徒が帰ってきてこの選手たちと一緒に練習している姿を夢に見ながらの応援だった。クリスマスの寒さの中でも練習は続いていた。ジャイルス選手にはここのトラックは静かで風がなくて、とても走りやすいと褒めてくれた。冬の間の練習の成果が出ているとテレビの解説者に褒められるのを聞くと、自分のことのようにジャイルス選手の活躍が嬉しい。ビッグスコーチの他にも、ワイトマンコーチ、ダンコーチの選手たちも練習に参加し、静かだったトラックに活気が戻ってきた。
東京オリンピックを目指す若手選手もいるとのことで、ますます応援に力が入った。このコロナウイルスで開催は危ぶまれているが、練習する選手たちの姿を見ていると、何とか開催し日本で頑張る選手達を本校の生徒と共に応援したい。ここ立教のトラックで練習した選手達の東京オリンピックでの活躍を期待する。そして、一日でも早くロックダウンが解除され、若手選手と立教の生徒がこのトラックで一緒に練習する時が来ることを待ち望んでいる。