今年度から始まった1学期のアウティング、小・中学生はLyme Regisという小さな海辺の町に化石採集に出掛けました。
ここ数日ぐずついた天気が続き、この日も朝から曇り空。時折小雨がちらつく生憎の天気でしたが、予定通り9時前には学校を出発。西に向かって長いドライブが始まりました。Lyme Regisへの道はすべて一般道、高速道路がないので3時間以上の道のりです。最初はしゃいでいた生徒たちもいつの間にかウトウトし始め、気がつくとコーチはパッチワークのような田園風景の中、細くくねくねと続く田舎道を走っていました。古くて小さなLyme Regisの町にコーチが入っていく頃、その夢見心地の時間が数億年前の化石との遭遇というタイムスリップ気分を演出してくれていました。
カモメが沢山舞っている海辺の広場で、早速学校から持ってきたサンドイッチや果物を頬張り軽い昼食をとりました。美味しそうなランチめがけてスーッと降りてくる大きなカモメたちと怖々戯れながらお昼ご飯が終わると、いよいよ化石採集ツアーの始まり。大きなリュックを背負って長靴を履いたガイドさん達が登場しました。地質学者のパディーさんと動物学者のクリスさん。ちょっと変な組み合わせですが、彼らが言うには、「化石が僕達の接点なんだ。」とのこと。
どちらも「本当に化石が好き」という気持がひしひしと伝わってくる話しっぷりで、最初の解説を聞きながら、気分はもう1億年以上も前のジュラ紀へ行っているようでした。
カモメが沢山いた海辺の広場からMuseumの前の小道を過ぎて階段を降りると、ごろごろと石が転がる浜辺に出ました。既に遠くまで潮が引いていて、海藻やぬかるんだ砂地を注意深く進んでいくと、先頭のガイドさんの周りに生徒たちが集まり始めました。皆でかがんでいるところを見るとどうやら最初の化石が見つかった様子。
「これは多分1、2メートルの魚の骨のものだな。そして、こっちはイカみたいな生物のもの。はい、これあげるよ。」
一見、ただの石にも見えますが、確かにさっき説明の時に皆で見た化石と同じ形をしていました。
「あのー、アンモナイトはないんですか?」ポツリと中1の生徒が聞きました。
「大丈夫、ちゃんと見つかるよ。もう少し先にいってみよう。」
心配していた雨はまだ降らず、グレーの空は化石採集にはピッタリの天気にも思えてきました。お揃いの学校のウィンドブレーカーを着て、みんなで下を見ながら歩いているのはちょっと不思議な光景でした。「これ、化石ですか?」ちょっと変わった模様がついている石が見つかると、ガイドさんのところに持っていって聞いてみます。「よくやったね、その通り!ほら、ここにあるのもそうだよ。」この頃から生徒たちはそこここで皆しゃがみこんで石をころころとひっくり返し始め、「あっ!見つけた!」「これも!」とあちこちで歓声があがりました。
ガイドさんと一緒に歩いて、ガイドさんの見つけた化石をどんどんもらっている要領のいい生徒、無言で石をひっくり返しながら黙々と化石探しを続ける生徒、ワイワイはしゃぎながら浜辺を行ったり来たりしている生徒… 「あっ!アンモナイト!!」ひっくり返した石の裏に教科書の写真で見た通りのアンモナイトの模様が本当についている! ーこれにはやはり大感動でした。
やがてポツポツと雨が降り始めましたが、皆、夢中で化石探しを続けました。重そうな石を持ち歩く生徒にその石を見せてもらうと、確かにアンモナイトのクルクル模様がきれいについています。「そんな大きな石、本当に持って帰るの?」―「ハイ!勿論!」嬉しそうな笑顔で答えてくれました。
雨脚が少し強まってきた頃、ガイドさんが生徒たちを呼び集めました。「こういう薄めの石は割ってみると中に化石が入っていることが多いんだ。6つに1つくらいの確率でね。」そう言って採取用のハンマーで早速コンコンコン…。その石が パカッと上手く割れたとたんに生徒たちからは大歓声! 一つ目から大当たり! 断面にきれいなアンモナイトの化石がいくつも並んでいました。写真を撮りながら、ガイドさんの華麗なハンマーさばきをしばし観察。ハンマーの尖った部分と平たい部分を上手く使い分けて、次々と新しくできる断面をチェックしていく手さばきはまさにプロフェッショナル。固い石のはずなのにまるで何か他の物体のように簡単に扱っているのがとても不思議でした。
ガイドツアーが終わる頃にはすっかり雨になっていましたが、生徒たちは皆大満足。採集した石をバッグや袋に入れて集合しました。ガイドさんにお礼を言って別れたあとは、グループに分かれて、Museumの見学をしたり、お土産屋さんをみてまわったり、コーヒーショップで温かい飲み物を飲んだりしました。
体が温まるとまた元気が出てきて帰りのコーチの中では大はしゃぎ。楽しく過ごした1日のことを、学年を超えて皆で話しているのを見ると、家族旅行で家路に着く時の気持を思い出しました。このまま家に着かなければいいのに… そんな楽しい一日でした。