引退試合が終わり、僕は帰りのバスの中でいつもよく見る田舎景色を見ながら一人思った。
「終わりか。」
初めて練習に行った日から今日まで約2年。「楽しかった。」とか「もっとプレーしたかった。」は二の次でこの言葉が自然と頭に湧いてきた。部長として約1年間、嬉しい時も辛い時ももちろんあった。辞めたい時もあった。そう思った時に、いつも考えることがある。
「じゃあなんで入部したの?」
これを自問することで立ち直った。正直なところ、この質問に答えはない。この質問をすることでバレーボール部の活動を初めて見た当時の自分を思い出すことができる。その時何を考えたのかは詳しく覚えていない、がしかし何か魅力的なものを感じたのは確かだ。
思い出すことによって魅力的なものが何だったのかが気になる、だから再びコートに行く。立ち止まってしまったら、スタート地点を見ればいい、見ることでまた前に進む。そうすると何時の間にか、かなり進んでいることに気づく…。これが「成長」というものだろう。部長という肩書きが付くことは決して楽なものではなかったが、たくさんの経験を得ることができた。でも少し疲れた、だから「終わりか。」という言葉が出てきたのかもしれない。
立教の校門が見えた。これが最後、僕はこれにて引退する。後輩にはさらに上を目指して頑張って欲しい。バスが止まった。生徒はまだ夕食中。部長は試合の報告をそこでする。それが最後の仕事だ。ニューホールの入口に大きな鏡が掛けてある。僕は何気なしにちらっと見た。2年前ここに立っていた自分よりも心も体も大きくなったなと思った。それで少し嬉しくなって食事の席に足を進めた。
(高等部3年生 男子)