学校を出発してから3時間半後、ケンブリッジ到着。予定では2時間のドライブ。高校1年生の遠足は予想外の交通渋滞から始まった。出発時はわくわくで元気一杯だった若さ溢れる高校1年生32名は、ケンブリッジ到着時には寝起きの状態に逆戻り。ヨタヨタしながらバスを降り、いざ、世界屈指の歴史ある学問の街、ケンブリッジの中へ!
秋晴れの爽やかな外の空気を吸い、新学期の活気溢れる道行く人々とすれ違ううちに生徒達はまたもや覚醒。お腹がとても空いていることにも気づき、それぞれの班で美味しい食を求めて散らばっていった。中国の水餃子、ベルギーのワッフル、タイカレー、イタリアのピザ。これらはすべてケンブリッジの中心のマーケットで手に入るもの。様々な国籍の人が集まって美味しい食事を提供しており、ケンブリッジがとても国際的であることを早くも実感できたランチタイムであった。
ケンブリッジ遠足の主なイベントは2つ。街のガイドツアーと晩禱である。ガイド無しでぶらぶら歩くだけでも十分に楽しめる街並を持つケンブリッジであるが、ガイドの方と共に周ると面白さは数倍にもなった。例えばピーターハウス。これはケンブリッジに31あるうちの最古のカレッジの1つである。この建物の2階の一番左端の窓には妙な鉄格子がついている。ガイドさんの説明で、この鉄格子はイギリスで最も有名な詩人の1人であるトマス=グレイが、火事がおきた時に備えて、脱出用のロープを括り付けるために設置したことが分かった。(そして、そのことを知っている寮生が『火事だ!』と叫んで嫌がらせをしたことも…。)それから、一見普通の道端にあるごみ箱。これは、Binmanと呼ばれる人が中に入ってギターを弾いて歌を歌うストリートパフォーマンスを行うごみ箱だそう!そして、ケンブリッジの目玉、キングズ=カレッジチャペル。荘厳な建物に圧倒されるが、ケンブリッジの学生の中には、建物のてっぺんの斜塔に命がけで登ってサンタの帽子をかけて遊んでいる人もいるそう。似たようなエピソードでは、トリニティカレッジ。その門にあるヘンリー8世の像が手に持っているものはよく見ると椅子の脚で、昔生徒が面白がって剣の代わりにヘンリー8世に持たせたそう。このように様々な悪戯エピソードもあるケンブリッジ。何だかユーモアがいっぱいの魅力的な街であることが分かった。
晩禱はキングズ=カレッジ=チャペルで行われた。夕方の西日が見事なステンドグラスから差し込む中、ルーベンスの『東方三博士の礼拝』の油絵を前に世界最高峰の歌声と共に晩禱は始まった。聖歌隊は少年達と男子学生が歌っていたが、会堂中に響きわたる美しい高音を聴くことが出来た。毎日、朝の礼拝をしている立教生ではあるが、夕の礼拝である晩禱は初めての人が多かった。朝とは異なり、心を沈め、日常を振り返るひとときとなったのではないだろうか。見事な天井やステンドグラスを見つめながら、ゆったりとした時間の中で少し微睡んだ生徒も含めて、大切な時間になったことだろう。
歴史ある荘厳なケンブリッジ。でもユーモアがあって親近感の湧くケンブリッジ。帰りの道のりが随分と速く感じられたのは、交通渋滞が無かったからなのか、ケンブリッジがあまりに楽しかったからなのか…。32名での初めてのアウティング、素敵な思い出がまた1つ増えたように思う。