ここ数日秋にしては暖かな日が続いたが、今日は久しぶりに冷え込んだ。昨日がハロウィーン。町のあちこちにはまだカボチャのお化けや黒装束の魔法使い人形などの姿も見られるが、そろそろクリスマスの飾りつけも始まる頃。ということで、今日の中学部1年生フィールドワークは「クリスマス」について、街を行き交う人たち、お店で働く人たちにインタビューをすることにした。
実質今学期のフィールドワークはこれが最終回ということもあり、また、これまでのフィールドワークでの獲得ポイントの累計を前日に発表したこともあって、今日は皆出かける前からかなりの意気込みだった。
「先生!余分のインタビュー用紙最初から貰えませんか?」
「今日は絶対Aさんに勝ちますよ!」
そう言えば、昨晩のうちに質問をワード文書にまとめてタイプをして覚えていた生徒もいた。
「今学期の獲得ポイントに応じて学期末にご褒美をあげますからね。」
中学1年ぐらいだとまだこういう動機付けにも素直に反応してくれる。
もちろんご褒美は用意してある。それ目当てでもしっかりイギリスの人たちと会話をしくれればそれでいい。
実際、既にこの子達は英語で話す面白さを知っている。自分たちの英語が「使える道具」だということに気づいている。
あとは「もっと伝えたい!」という気持ちになるまで、このフィールドワークをしっかり楽しんでもらえればいいと思う。
Horshamの街に着くと、一緒に来た中学部2年生と別れて中学部1年生の担当する場所までみんなで歩いた。
「先生、まだ〜!」
「集合場所を確認してからね。」
「そこに着くまでにインタビュー始めてもいいですか!」
今日は一体どんなことになるのだろう?明らかにいつもの2倍のテンションはある。
「はい、それではここに3時5分に集合ですよ。丸々30分はありますからしっかり聞いてらっしゃい。」
ハーイ!と三々五々散らばりながらも早速そこここでインタビューが始まった。
あっ、その人はちょっと急ぎ足だからやめた方がいいかも…
と思うのは大人の感覚? そんな人ともしっかりインタビューを始めている。中1くらいの日本人の子供が「I’m practicing English. May I ask you a few questions?」と笑顔で近づいていったらよっぽどのことでない限り足を止めるしかないのかも…
今日は今までとは少し様子が違ってきたことにも気付いた。この子達は 随分色々な人に話しかけられるようになった。
インタビューを始めたばかりの頃は、「なるべくゆっくり歩いているご老人に話しかけてごらんなさい。」と勧めていたのだが、今はもう、若い人や子連れのお母さん、ビジネスマン風の男性やちょっと怖そうなお兄さんにまでインタビューをしている。歩道に並べられたカフェのテーブルでお茶をしている人たちに話しかけたり、停留所でバスを待っているおばさん達のところへ行ったり… あまり人を選ばなくなった気がする。誰にでも話しかけられる勇気、あるいは自信みたいなものが持ててきたのかもしれない。
集合時間になるといつも通りの「あともう一人だけいいですか?」「この場所で聞くならいいでしょ?」が始まった。
視界にはほぼ全員集まっているのだが、なかなかインタビューが途切れず、切り上げるタイミングが難しい。
「はい、それでは行きますよー! 中2の先輩たちが待ってますからねー!」
駐車場へと歩く道すがら、今日のポイント数を言い合いながらワイワイガヤガヤと楽しそうにやっていた。
インタビュー用紙を集めて教員室に戻り、今日の収穫を一枚一枚見ていく。「クリスマスのメッセージ」を書いてもらうという欄もあるのだが、いろいろなメッセージがあった。
“Have a lovely Christmas!” “Good luck and enjoy your stay in England” “Well done! Better than my Japanese!” “Very good English. Very brave.” “Enjoy your Christmas and have fun, eat lots! All the best for 2017!” “Ho Ho Ho Santa’s coming to get you!” …などなど。
子供達がホーシャムの街で集めてきたイギリスの人たちからの温かいメッセージ。そう言えば… 少し冷え込み始めた曇り空の下でのインタビューだったのに、生徒たちと話していた人たちは皆んな優しそうな笑顔だった。もうすぐそこまで近づいているクリスマスが皆んなを幸せな気分にしていたのかも知れない。そんな人たちが書いてくれた直筆のメッセージを見ながら地元のイギリス人の温かさをひしひしと感じた。「英語」はもちろん、それよりももっともっと大切なものを学んでいる子供達が少し羨ましくなった。
今学期最後のフィールドワークも大成功だった。