「森いかね?」そう誘われたのは友達と帰路につく時であった。
私は根っからのインドア派でコンビニに向かおうとするだけでも腰が上がらないほどだ。しかしこの時に限ってはそうではなかった。
せっかくこんな大自然に囲まれて生活をするのだ。少しばかり外の空気を吸いに行くのもいいではないか。意外と森には面白いものがあるかもしれない。
「行こう」そこからは早かった。いつもはベッドメイクをだるそうにやる我々も今日に限ってはそうでない。稲妻のような速度でベッドメイクと着替えを終わらせて、浮足立ちながら馬糞の臭いがする道を経て、森へ向かった。
「この時期はブルーベルが綺麗なんですよ」先生から聞いたその一言を胸に期待の気持ちいっぱいで森へ入ると、その言葉通りの美しいブルーベルがあたり一面に咲いていた。「エモい」とはこういう事を言うのだろうと感動しながら森を歩いた。
森の中を歩き始めて15分くらいだろうか、幻想的な青紫の絨毯の中に白い何かが混じっていた。鈴蘭だ。ここでは「ホワイトベル」と呼ぶようでそれを見ることができると幸運が訪れるそうだ。
たくさんの写真を撮り、友達と他愛もない話をして歩き続けること30分、気がつくともう出口が見えてきた。自分の想像していたよりも遥かに良い体験だったなと思いながら帰宅を先生に告げ至福のシャワーを浴びた。こんな日もたまにはあってもいいのだろう。
翌朝、担任が一言「今日はクラスでブルーベルを見に行きます。」
(高等部1年男子)