高等部2年生のアウティングは、これまでとはひと味違いました。
まず、行き先は進路選択に合わせて二通り。文系コースの28名は帝国戦争博物館。理系コースの9名は王立研究所です。どうしても生徒に観て欲しかったもの、でも専門性があるので全員が興味をもってくれないかもしれないもの、それを見に行くことにしたのです。結果は大成功でした。
まず、文系コースの生徒達。帝国戦争博物館には、第一次世界大戦以降の世界の戦争に関する展示が多くあります。世界の戦争の中心にいたイギリスだからこそ集まる資料がたくさんありました。世界最初の戦車、毒ガス爆弾、実物大の塹壕の模型、原子爆弾。大切な命を簡単に奪う兵器の数々に生徒達はショックを隠せません。つい最近までイラクにいたという報道用の車の展示物は銃弾でボロボロ。悲惨な戦争が現在進行形で行われていることを如実に物語っています。そして最後に皆で訪れたのは最上階にあるホロコーストの展示。ヨーロッパでいかに凄惨なことが行われていたか。そしてそれをヨーロッパの人々はどれだけ反省し、後世に伝えようとしているか。それらが分かる貴重な展示です。生徒達は今まで教わった知識と目の前の展示を真剣に繋げようとしていました。教科書だけでは読み取ることができない「生きた歴史」を感じ取ることができた訪問でした。
理系コースの生徒達が訪れたのは王立研究所。電気分解の世界的な研究の中心であった場所です。10種類の元素が発見されたといった研究における貢献だけでなく、科学者と一般市民が初めて対話をしたところとしても有名です。「空がなぜ青いのか」という市民の疑問に、チンダル教授が丁寧に、わかりやすい言葉で答えました。科学者と一般の人々との架け橋となったこの研究所は、科学が人のためにあり、また人の交流が科学を発展させるのだということを思い出させてくれます。様々な実験道具や科学の発展に関する展示を見て、生徒達はさらに興味を深めたようです。
集合地点までは電車で移動。初めて乗るロンドンの地下鉄は日本の電車と比べ、とても狭く感じられたようです。
集合後は友達との思い出作り。文理・1組2組織り交ぜてのグループで買い物と夕飯を楽しみ、無事帰校しました。
翌日にまとめとして書いた作文の中には、良い作品が多くありました。このイギリスの地で学んで欲しかったことを学んでくれたアウティングは、きっと将来に生きる経験となるでしょう。