海へ

海へ
目をあけたら、カーテンのすき間から光が漏れていた。鳥の元気な鳴き声を聴いて、自然と口角が上がる。大当たりの天気予報。眠気はもうどこかへ飛んでしまったようだ。
「晴れたね!」
「ね!」
その日は海に行く日。ロンドン外出のなくなったハーフタームの中、唯一の大きな外出だった。
十分な睡眠時間からか、いつもよりすっきりしている頭のおかげでてきぱきと支度を済ませることができた。嬉しいことにホームステイ先の方が車で送ってくださるらしい。自分たちだけで出かけるのもまた楽しそうだが、あいにく英語が不得手な二人である。もし二人だけならば海に着くのに一体何時間かかっただろう。
 1時間も経たないうちに車が止まる。かもめを見つけ、見えてもいない海を感じた。
 ステイ先の方に簡単に街の案内をしていただいた後、二人で海を目指して歩いた。暑くて途中でアイスクリームを食べた。地図通りに歩いていくと道の先に少し水平線が見えた。太陽の光を反射したそれは、波のリズムに合わせて輝いている。
 久々に見る海に感動した。浜辺の店で一緒にお土産を買ってそれから海を背に写真を撮った。もう一度改めて海を見る。海に人の心を晴らす効果があるというのは本当のようだ。悩み事や心配事が特別あるわけではないけれど、何だか気分が晴れていく。
 ひとしきり海を楽しんだ後、いつの間にか傾いていた太陽が夕方を示す。焼かれた肌が熱を含んで軽くしびれるような痛みを感じ、今さらながら不十分だった日焼け対策を後悔した。
 明日はゆっくり休もう、という提案に友人からの同意が返ってきた。
(高等部1年生 女子)