この本は短編集だったので、その中で1番自分が考えさせられた作品について書こうと思います。
その物語の主人公は、妻と子供を2人持つ、会社勤めのお父さんです。彼は会社でも家でも「器が大きい」とか「大人だ」とか「強くて余裕がある」と言われ、一目置かれているような存在でした。彼自身も、「間違ったことだけはしたくない。正しい、理想の自分になるために頑張って生きているのだ。」という考え方を持っていました。しかしそれ故、何もかも合理的に考えてしまって、弱い人の気持ちを上手に理解してあげることが出来なかったり、他人に気を遣って、少しでも良い雰囲気にしようとして、どんなに怒っている時でも、どんなに悲しい時でも、無理矢理自分をコントロールして感情を抑制してしまうような人なのでした。
彼のお話を読んで、「自分にもこういう所があるな。」と、少し共感した所があります。それは、「自分をコントロールしようとする所」です。私が何かと関わる時、その何かについて、知りたいとか楽しみたいとかもっと深く関わりたいという気持ちがあるのに、心のどこかで、「深入りしてはだめだ。とらわれすぎてはだめだ。」と思って、自分の本心とは裏腹に、あらゆる物と心の距離をとってしまう癖があります。何かにとらわれすぎたり、感情移入してしまうと、本当の自分を見失ってしまうようで怖くて、それなら自分の好奇心を抑えてでも、百パーセントの自分を確立させておこうと思ってしまうのです。この考え方で今まで生きてきて、望み通りあまり人に流される事なく、自分の信念や目標を見失う事なく生きることができていたような気がします。しかしそんな事をしているうちに、何かに夢中になったり、本気になったり、他人に優しくしてあげたり、誰かと協力したりする事ができなくなってしまった気がします。自分の本音を、理想とか信念とかでうまい具合にあしらいすぎて、自分や他人やその他のあらゆる物と真剣に向き合う事が出来なくなってしまった事に気付かされました。
理想や、合理的な事は、確かに一番正しい事かも知れないけれど、そうでない事から学べる事だってたくさんあるのだから、不必要だと決めつけないで、面倒だろうと、ひとつひとつしっかり向き合って、色々な考え方をして、強くて人間らしい人間になりたいなと思いました。
(高等部3年生 女子)