昼食を食べた後で眠かったせいもあり最初は無理やりテンションを上げていた。
しかしそれはただの空元気に過ぎず、ほんの数分ももたず気持はすぐに落ちた。車の中では会話もなく、外の景色を見ながらただただ到着するのを待っていた。
ここ、イギリスの景色はどこを見ても、のどかで落ち着く雰囲気をもっている。そのせいかミニアウティングに行くことすら億劫になった。
「つまらない」、そんな気持ちを変えたのは一瞬の出来事だった。
前の方にいる女子が一斉に黄色い声を出したのだ。うるさいなぁ、そう思った僕はふと女子の方に目をやった。女子が騒ぐのもすぐに分かった。フロントガラスの向こうに映っていたのは大きな、大きな虹だった。その虹は、絵に描いた様に丘の端から反対の山の天辺までかかる大きなアーチを描いていた。僕の心の灰色の部分を虹が明るく染めてくれた。
丘の上に車が止められ、ドアを開けたらものすごい風。本気で飛ばされるかと思うくらいの強風。
そして絶景。空気も澄んでいて気持ちが良い。さらさらと降っていた雨も気にならないくらい興奮してしまった。気付いたらとっても小さい子供の様にはしゃいでいた。大声で叫びながら丘を駆けた。下を見ると転んで吸い込まれそうになるにもかかわらず、夢中に走った。
ジャンプしてみると、上に跳んだはずが、風にさらわれて前に行ってしまう。それぐらい強い風が吹いていた。飛んでるって感覚を生まれて初めて知った。まぁ、飛ばされたというのが正しいけど。
日本では味わえないような楽しい経験が出来てよかったと思う。こんな経験をもう一度したいと思った。
(中学部2年生 H君)