夢中になることの素晴らしさを教えてくれたウィンブルドン

夢中になることの素晴らしさを教えてくれたウィンブルドン

ウィンブルドンに着いて、入場待ちの列に加わったときから、わたしは会場の熱気に圧倒されていた。それは、ほかの並んでいる人たちからは勿論、視界にまだ入ってこない会場の方から、ひしひしと伝わってきた。

テニスはやったことがないし、観戦するのは嫌いではないけれど好きでもない位の程度だ。そんな私がウィンブルドンでの一日で得られるものは一体何なのだろうと、土曜日の朝、出発するまで、正直わたしは不安だった。だが、コートや通路、ショップやフードコートの中にまで広がっている興奮に、元気が出てきた。この場所に来ている人の多くは皆テニスが好きで、貴重な試合を見るのを楽しみにしている様子だったからだ。限定のグッズを買おうと身構えている。そんな何かに夢中になって、熱中している様子は、わたしもそんな気分にさせてくれた。来場客を見ていて、何かに夢中になれるっていいな、と思った。同時に、ここで試合をしている人たちや、試合をすることを目標にしている人たちの、一生懸命な気持ちにも背中を押された気がした。

「期末試験はあと二教科。夏休みも勉強しなきゃ。スクールコンサートまで時間がない。」どこか焦っていた自分に、「着実に頑張っていけ」というエールを送ってくれているようだった。何かを一生懸命にやっていると、時間や量や難易度などの、つらく苦しい面ばかり見えがちだ。けれど、その過程は必ずしも荒野の道ではなく、目標に辿り着いたときには大きな喜びがある。ウィンブルドンの人々が醸し出す熱気は、わたしにそのことを再確認させてくれた。
(高等部一年 女子)