3月12日に行われた卒業終業礼拝で、冬期休暇中に全校生徒が書いた読書感想文の表彰がありました。その中から金賞、銀賞の作品を3回に分けてご紹介致します。
第1回は金賞、高等部1年男子生徒の作品です。
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「おじいちゃん 戦争のことを教えて」を読んで
今回の読書感想文の本は、先生方の推薦図書からではなく、祖父の推薦図書の中から選んでみた。
タイトルは「おじいちゃん 戦争のことを教えて」だ。本を書いたのはアサヒビールの社長をした中条高徳というえらい人だ。
題名から、戦争のことを書いた本だと思い少し気が重かった。戦争は僕にとって遠い話だ。日本が昔戦争をしたことを知っているし、今も世界のいろいろなところで戦争をしていることを知っている。でも戦争を身近に感じたことはない。学校でも詳しく学んでもいない。
それでもこの本にチャレンジしてみようと思えたのは、「おじいちゃん」に「教えて」とお願いしているのが僕と同じ高校生だと知ったからだ。父親の転勤でアメリカの学校で学んでいる中条さんの孫娘が、歴史の授業で歴史上の出来事を経験した人にインタビューをして、その情報をクラスで共有するという宿題がきっかけでこの本ができた。
本を読み進んで気がついたことは、中条さんは戦争のことを語りながら、常に「日本人としての心」について話していることだ。この本には生々しい戦争体験の話は出てこない。最初から最後まで、戦争を経験した日本人がこれからどう生きていくか、戦争から学んだことをよりよい日本を作るためにどんな風に生かしていくかということに結びつけて書いている。
僕が感動したのは「社会のためにという公に身を捧げることが人間にとって最も尊い行為だ」という文章だ。これは聖書に出てくる「人がその友のために命を捨てるという、これよりも大きな愛はだれも持っていません」という聖句と同じ考えだと思う。まわりの人に感謝する、謙虚である、礼儀正しくする、尊重するといった考えは、日本の文化の中で受け継がれてきたけれど、それは世界の人に対しても共通するものだと思う。
戦争に負けた日本は終戦後、西欧の文化を良いものとして取り入れてきた中で、日本人らしさを失ったとも言われる。中条さんの言う日本人らしさとは規範や礼節、道徳といったもので、それらは日本人を支える誇りになる、と書いてある。
立教のオープンデイやジャパニーズイブニングで、イギリスの人々に日本文化を伝える機会があるけれど、この本を読んでみるとまだまだだなぁ、と思ってしまう。日本文化を通して、文化と共に僕たちが受け継ぐべき「日本人の心」を充分には伝えられていないような気分になる。人に伝えられるようになるにはまず、自分がきちんとそれを理解していなければならないと思う。だから僕は少しずつでもそんな人になることを目標にしてみようと思う。
(高等部1年 男子生徒)