今学期小学生と中学1年生は、Weald and Downland Open Air Museumで社会科の学習を行いました。ここには17〜19世紀ごろのカントリーサイドの建物が移築され、ちょっとした村になっています。ひとことで言うと、野外農業博物館、でしょうか。建物だけでなく、羊・馬・ロバが飼われていたり、水車小屋の内部では実際に小麦が挽かれていたり、レンガ造りやビクトリア時代の小学校体験など、たくさんのワークショップも開かれています。イギリスの学校でも学習に多く使われる博物館らしく、訪れるたびに見学に来た現地の小学生たちに出会います。
今学期のこの博物館での社会科フィールドワークは
「テューダー・クッキング(TUDOR COOKING)」のワークショップと
野外博物館の見学
の2構成です。
ワークショップでは、テューダー・キッチンと呼ばれる移築された台所で、実際に昔の農家のケーキ作りに挑戦します。500年前ごろに、一般の人々が食べていたケーキです
始めに様々な穀物を見て学習。博物館のおばさんが、
「小麦は手で挽いて細かくするの。大変よ。」「これが挽いた粉。触ってみて。」
「小麦粉でパンを焼くの。この頃の食事はパンと、畑でとれた野菜。それから少しの肉。」
「ジャガイモやトウモロコシはないのよ。」「えーっ?」「もっと後に南アメリカから伝わったの。」「あっ、この間地理で習ったような気がする。」
「それから水。川や池で水をくむけれど、牛や羊もジャブジャブ入るのよ。きれいじゃないでしょう?水の代わりに、『ある飲み物』を飲むのよ。何だと思う?」「ビールだ、ビール!」「正解、BEER。」
…と、博物館の方はとっても話上手。
いよいよクッキング開始。
「まずSPICE(香辛料)よ。これをかいでみて、何か当てて。」と次々に材料の香辛料が生徒たちに周りました。
シナモンにジンジャー、ナツメグの3種。
「ところで、これから誕生日の人はいる?10月に誕生日の人?」「10月末だけど」と一人の女生徒が。
「じゃあ、彼女の誕生日ケーキということにしましょう。」
「まず小麦粉を入れて。」と小6の女の子が小麦粉を陶器のうつわに入れてゆきます。
次にハチミツを追加。
「当時は砂糖がとっても高価だったの。だから甘みにはハチミツを使うのよ。」
次の中1の男の子が卵を割ると、
「はい、これで溶いて。」と木の先を7つに割いたような、熊手のような、シンプルな泡立て道具を渡されました。これも当時そのままの道具でしょうか。
「今日は水道の綺麗な水を使うわね。」と言いながら、香辛料などと一緒に次々に材料をいれて混ぜ、2つにわけて、それぞれ木の板の上で手で平たく伸ばします。
後ろでは博物館のおじさんが薪に火をおこし、平たい鉄鍋を焼いていました。
おばさんが伸ばした生地を手際よく鉄鍋に並べます。
焼いている間、パンを焼く窯を見たり、お湯をわかす大鍋を見たりしていると、あっという間にケーキが焼けました。
1つのケーキはハチミツをかけて、もう1つはバターをかけて「さあ、召し上がれ。」
「あっ、意外においしい。」「私はハチミツのかかった方が好き。」「もう1つちょうだい。」
なかなかの人気でした。
ワークショップの前後には、博物館の敷地内を見て回り、豊かな農家のお屋敷を見学しました。二階に備え付けられたトイレが注目の的に。なぜなら下の通りにそのまま落ちるだけ。当時の衛生状況は??恥ずかしくないの??時代変われば、やり方も異なり、それには理由もついて来ます。面白いポイントのひとつ。
さらに、ビクトリア朝の学校も見てまわり、当時の学校のノートが黒板を使った小さな板であったこと(ノートとして書き残せない!)や、日本のそろばんのようなもの(同行のECの先生に、 Abacusと言うのよ、と教えてもらいました)を発見しました。
さらにロバをつかってくみ上げる井戸を発見。
イギリス式の高床式倉庫も発見。ネズミ返しの部分は、マッシュルームのような造形物。面白くて不思議です。
あちこちでたくさんの興味深いものを見学して、それぞれに学習を深めました。