2015年度卒業終業礼拝 在英国日本国大使館総括公使・総領事 宇山秀樹様からの祝辞です。

2015年度卒業終業礼拝 在英国日本国大使館総括公使・総領事 宇山秀樹様からの祝辞です。
 卒業を迎えられた生徒の皆さん、保護者の皆様、本日はご卒業誠におめでとうございます。そして、子供達を卒業まで導いてこられた先生方、関係者の方々にも、心からお祝いを申し上げます。
 私は立教英国学院を訪問するのは本日が初めてですが、緑豊かな広大なキャンパスと立派な設備にまず感銘を受けました。日本国内では考えられない素晴らしい環境ですね。このような素晴らしい環境の中で、大家族のような寮生活を送りつつ、真に国際社会に通用する人間を育成するという高い理念の下で、厳しくものびのびと教育を受ける機会に恵まれた皆さんは、大変幸せだと思います。海外との接点は社会人になるまで全くなかった私からすると、正直羨ましい限りです。立教英国学院が、先ほど祝辞を述べられた欧州三井住友海上英国支店長の須藤さんのように、各方面で国際的に活躍する人材を輩出してこられたのも頷けます。外務省で私の1期下にも立教英国学院の出身者がおりますが、彼はワシントンや北京の日本大使館で勤務し、現在は、日本の安全保障政策に大きな役割を果たしている内閣官房の国家安全保障局で活躍しています。
 今日卒業する皆さんにも、立派な先輩方のあとに続いて、グローバリゼーションが進む国際社会の中で日本の未来を担っていく人材となることを期待しています。こんなことを言うと、荷が重いなあと思うかもしれませんが、皆さんは、そのための素養をここ立教英国学院で身につけてきたはずです。
 皆さんの将来に期待を込めて、頭の片隅に置いてもらいたいことを2点だけ申し上げたいと思います。
 1つは、日本人としてのアイデンティティと誇りを保ちながら、様々な文化や価値観を理解し、それと共存できる心の豊かさを持ってほしいということです。皆さんは、英語による授業のみならず、ローカルコミュニティとの様々な交流、ホームステイ、短期交換留学、大学のワークショップへの参加等々、日本国内ではできない貴重な経験を沢山して、英国の文化や習慣、英国人の考え方、また、英国という国の懐の深さにも触れてきたことでしょう。同時に、日本の国、日本の文化などについて英語で語ろうと努力することを通じて、日本の優れた点、世界に誇れる美点を再発見することもあったのではないでしょうか。自分の母国、文化を理解した上で、多様性を受け入れられる寛容の心を持つのが、真の国際人であろうと思います。国際社会においては、主張すべきは主張しなければならない場面が多くありますが、一方的な主張を押しつけるのではなく、相手の立場にも配慮しながら論理的に議論することができる人、そして他者への思いやりや謙虚な立ち居振る舞いが尊敬されるような、そんな品格ある国際人を目指していってほしいと思います。
 2つ目に、失敗を恐れずチャレンジする精神と、困難に立ち向かうたくましさを持ってほしいと思います。これから先の人生、楽しいことや成功ばかりではなく、壁にぶつかって悩むこと、辛いこと、失敗することもいろいろあるでしょうが、挫折の経験も人生の糧となります。
 昨年ラグビーワールドカップ・イングランド大会で日本代表チームが強豪南アフリカに対する勝利をはじめ歴史的な3勝を挙げたことは記憶に新しいですが、そこで大活躍した五郎丸選手も、過去に大きな挫折を経験していたそうです。大学ラグビーで1年生からエースで、19歳で日本代表になるという順風満帆であったのが、2011年のワールドカップでは直前に代表から外されてしまったのです。五郎丸選手は、最近のインタビューの中で、「失敗して初めて気づくことが多かった」「逆境は自分にとってのチャンスと思えばチャンスになる」と述べています。その言葉どおり、失敗に学び、その後4年間たゆまぬ努力を続けた結果、昨年のワールドカップに29歳で初出場し、歴史に残る活躍をしたわけです。
 五郎丸選手と並べるのは一寸おこがましいのですが、私自身も、もう30年も前の話ですが、挫折をばねにした経験があります。私には子供の頃から将来は外交官という夢があったのですが、大学4年のとき外交官試験に落ちて、1年留年して再挑戦しましたがまた落ちてしまいました。或る会社に入社し、北九州に配属になって独身寮に入りました。しかし、このまま長年の夢を諦めていいのかと自問して、ある日、もう一度だけ試験に挑戦しよう、それでも失敗したらもう悔いはないと思い定めました。その後半年ほど、時々天井から百足が落ちてくる古い独身寮の6畳一間に同期と2人という生活、特に最初の1ヶ月半は新入社員の現場研修で、ヘルメットをかぶって工場で汗を流して夜勤するという、およそ勉強には適さない環境でしたが、そういう逆境にあったからこそ、かえって本気で勉強できたのでしょう。3度目の挑戦で外務省に合格しました。この経験が、その後の私にとって様々な困難に対処していける精神力・忍耐力を養ってくれたと思います。
 皆さんも、これから先困難な状況に直面しても、「逆境はチャンスと思えばチャンスになる」と考えて、挫けずに努力し、チャレンジしていく、精神的な強さを是非身につけていってください。
 最後に、皆さんが立教英国学院で学んだことにより、将来世界に羽ばたいていける大きなチャンスを得たことを祝福すると共に、自分の意志と努力で明るい未来を切り開いていくことを心からお祈りして、私からの祝辞とさせていただきます。 あらためて、ご卒業おめでとうございます。