みなさんは、11月のガイ・フォークス・デーという日を知っていますか。
日本のお盆や桜まつりのように、イギリスでは毎年晩秋の恒例行事になっているものです。今年は幸運なことに、この伝統的なおまつりに行くチャンスがおとずれましたので、小学6年生と中学1年生が遊びに行ってきました。
ガイ・フォークスは、16世紀に国会議事堂を爆破しようとして逮捕された人物です。この爆破未遂事件の背後にはイギリスの複雑な宗教事情が横たわっており、ガイ・フォークスを単純に悪者と言ってしまうのは難しいのです。が、未遂によってたくさんの人の命が助かったことを記念して、Guy Fawkes Dayという日が生まれました。11月の最初の週末には、村々で焚き火をたいてお祭りをするならわしです。ついでにガイ・フォークスの人形をつくって燃やしてしまいます。事前にクラスで、かんたんにガイ・フォークス・デーの勉強をすると、「逮捕された人を焚き火にくべて、お祭りにしちゃうの?」子どもたちはびっくりしていました。…そうですよね、21世紀とは思えぬ行事かもしれません…
小6と中1がおとずれたのは、地元CRANLEIGH村のGuy Fawkes Bonfireのお祭りでした。霜月を迎えて吐く息はまっしろ、大気に切られるような冷えきった夜。「さむいさむい」「凍っちゃうよ〜」とトントン足踏みをしながら、屋台で夕食を食べるのもまた楽しい。村の中央から、松明を持った人々がガイ・フォークスのパレードを始めると、一緒に歩いて村はずれに作られた枯れ木を積み上げた場所へ。見上げるような枯れ木の小山にあちこちから松明が投げかけられて、ポッポッと火がつき、みるみるうちに夜空に炎が燃え立ちました。炎の背後には、真っ暗な夜空に浮かんだ月。美しくて、なんとありがたい火なのでしょう。「暑い熱い」「まる焼きになっちゃうよ!」とわいわいしながら村の人達と焚き火にあたっているうちに、心までぽっかぽかになり、折よく夜空 に打ちあがった花火に興じました。日本では花火といえば夏の催しですが、夏は22時ぐらいまで明るいイギリス、花火は冬だからこその楽しみなのです。
国家をゆるがすガイ・フォークス事件をお祭りにするなんてびっくりですが、焚き火にあたって温まってくるうちにだんだん分かってきました。11月は農閑期。小麦の刈り取りが終わって、羊たちの放牧だけになって、枯れ木ばかりが目立つ寂しい風景と身を切られるような寒さの毎日が続きます。そんなきびしい季節の中で、村の人々が集って楽しむ恰好の理由になったのでしょう。晩秋のちょっとした村の楽しみだったような気がします。きっと昔は、焚き火のまわりで踊ったり、お酒を飲んだり、しゃべったりしたのでしょうね。