ケンブリッジ大学--いわずと知れた世界でも有数の一流大学であり、またダーウィンやニュートンらを輩出した名門大学でもある。知性あふれる街並み、ケンブリッジ――そんなイメージを抱きながらアウティングに臨んだ。
着いた先は、落ち着いた、こぢんまりとした街であった。固く閉ざされた研究室、帽子をかぶり、本を片手に歩く人々、知識人が暮らす街――そんなイメージとは違い、小さな川が流れる、黄色いレンガの伝統ある建物に囲まれた親しみやすく、明るく、美しい街並みがそこにあった。そして、難しそうな本を片手に知的な学生がうろうろしている、なんてことはなく、自転車が狭い道を鳥のように駆け抜けていく、そんな街であった。
昼食を食べた後は、学年で3班に分かれ、英語のガイドツアーに参加した。街並みを歩きながら、ケンブリッジの歴史から始まり、さまざまな建物の由来など、1時間半ほどの説明を聞いた。昔、銀商人が商売をしていたSilver Street、ケム川のパント、Queen´s Collegeの由来、パブの落書きや怪談話まで、エピソードに富んだガイドの話は聞いていて面白く、新しい発見も多くあった。特にアラン・チューリングやホーキング博士などのケンブリッジと繋がりの深い人物については皆身を乗り出して聞いていた。
ガイドが終わった後は、待ちに待った班行動。ある班はショッピングを楽しみ、またある班はその美しい街並みでの散歩を楽しみ、またある班は食を楽しむなど、思い思いの時間を過ごしたようだ。
17時からのキングスカレッジでの晩祷。入場できる数は多くはないので、希望者のみこの晩祷に参加した。
ヘンリー8世が建てたというキングスカレッジの教会は、ゴシック建築の白く複雑な模様が施された柱や壁に囲まれており、その壁一面にはステンドグラスが張り巡らされている。そしてその廊下の一直線に伸びる先には、ルーベンスの絵画。ため息がつきたくなるほどに荘厳で美しい教会の中で、晩祷が行われた。
教会の中はすでに薄暗く、ろうそくの灯の中で響き渡るクワイヤーの歌声。その美しすぎるほどに美しい歌声はまさに天使を思わせ、神に向かって歌い、祈ることがこんなにも美しく高く尊い行為であるのかと我々の心を震わせた。人間の矮小さや驕り、そのようなものを思い反省をし、また日頃のあわただしい日常生活から離れ、自分を見つめる聖なる体験であったように思う。
陽も落ち、街は夜になった。ところどころに光る街灯の明かりは、落ち着いた上品な夜のケンブリッジを演出し、パブからはゆったりと食事を楽しむ人々の温かい雰囲気が感じられた。そんな街を歩いているともう集合時間。コーチに乗り込み、2時間半かけて、学校に到着した。