「因数分解はラジオ体操」因数分解コンクールの冊子には、そのように書いてあります。日本人が昔から親しんできたラジオ体操。今日では都会のオフィスであの音楽が流れることは珍しくなりましたが、長年日本人の健康を支えてきた習慣です。実は立教生は毎朝、当たり前のようにラジオ体操をしています。因数分解はそのラジオ体操と一緒。当たり前のように、毎日コツコツと、頭の健康のためにやるということです。
2学期が開始してすぐの食事の席で、何にでも全力投球の立教生が、私に「因数分解コンクール、勝負しましょう」と言ってきました。よし、やってやろうと、生徒と一緒になって取り組みます。因数分解に本気で取り組むのは高校時代以来のこと。さび付いた頭をなんとか動かします。毎日練習問題を解いていると、しだいに歯車が回り始め、「この時はこうしよう」と反応できるようになってきました。昨日解けなかった問題や、何分も考えた問題が解けたときはやはり気持ちが良いもの。解き終えた生徒たちは得意になって、解法を解説し合っていました。皆で真剣に取り組む、この繰り返しが大切なのです。ラジオ体操は、毎日やっている人たちにとっては、何も考えなくても体が反応するものです。因数分解も、日々の積み重ねで反応できるようになります。
本番の60分間は、皆が集中を切らすことなく、ペンを走らせる音だけが聞こえてきました。60分で100問というのは大変で、かなりのハイペースでないと最後まで終わらせることができません。生徒たちはさすがに慣れていて、とても早い。少しはカンがよくなった私ですが、柔らかい生徒の頭の回転には、とてもついて行くことができませんでした。
成績優秀者の結果は速報として、その日のうちに発表されます。私も本気になって取り組んだ因数分解。結果はさんざんたるものだったので、90点以上をとった生徒達の格好良さを心の底から理解しました。立教生はとてつもない能力をもっている。それは因数分解を毎朝のラジオ体操のようにコツコツと取り組む、その絶え間ない努力です。今回は不本意に終わった生徒達も、来年は彼らのようになろう、そう思ったに違いありません。私もその1人として、またコツコツとやっていくつもりです。