高校一年生の第一学期「現代文」は、川上弘美さんの「境目」という随筆でスタートを切りました。様々な「境目」を例に挙げながら、さりげなく「境目」に対する考察や独自の考えを述べていた筆者。読解後の発展学習として、各自ペンネームを使って「オリジナリティー」を重視した600字程度の「随筆」を書くことにチャレンジしました。学期末に完成した「2018年度 高一エッセー集」の中から、いくつかの作品を10回に分けてご紹介します。
「ごめんなさいの代わりに」
〈ペンネーム〉カタリナ
「写真って、後から見返すとすごく良いものじゃない?」そう言っている友達の隣で、私はあまり賛成できないでいた。だいたい引きつった笑顔を浮かべた自分がいて、後から見て少し悲しくなるからだ。
誕生日の夜に、本棚から成長アルバムを取り出した。薄暗い部屋でひとり、最初のページからぱらぱらとめくっていた。すると、八歳あたりからだんだん写真が減っているのに気がついた。なんでなのだろう。
「私、写真嫌いなの。撮らないでほしい。」
ああそうか、私がこう父に言い放ってしまったのか。その時の父の寂しそうな顔がパッと頭に浮かんで消えてくれなかった。
写真の中の時間は凍っていて、色あせないままだった。忘れてしまいそうなこともその時の感情も、その空間を切り取って後からまた思い出せる。幸せなことだと思う。
八年前の私が父に言ったことは消せないけれど、今なら「一緒に撮ろう」と伝えられる気がした。