イギリスの冬は夜が長く寒いので厳しい季節です。それだけに人々はこの冬の間をどのように楽しく過ごすか色々考え工夫しています。色々なマーケットが広場で催されたり、行事が次々に行われたりします。そしてその最大のものがクリスマスです。九月に入ると店では様々な美しいクリスマスカードが売られ、ガーデンセンターではモミの木やクリスマス用品が所狭しと並び、人々は今年どのようにお祝いしようか考えます。
一ヶ月前くらいになると町の大通りには美しいイルミネーションが飾られます。日本では節電で今年は分かりませんが、最近は神戸や東京でも飾られているのと同じようなイルミネーションです。商店や個人の家でも豪華に点灯するところもあります。学校に近いクランレーやラジウィック村、ギルフォードやホーシャム町にも素晴らしいイルミネーションが飾られ、辺りを美しく照らします。
十二月二十四日が「クリスマスイヴ(前夜)」です。イエスさまの誕生日をお祝いするのがクリスマスです。西暦は最初のクリスマスから定められました。イエス様の誕生前を紀元前BC、そしてその後が紀元後ADです。この日の夕方、BBCテレビはケンブリッジ大学キングスカレッジの「クリスマス礼拝」を毎年放送します。世界で最も優れた聖歌隊と言われる合唱と聖書の朗読からなる礼拝です。イギリス中のほとんどの人が、この礼拝を楽しみにテレビをつけます。この礼拝は毎年DVDに録画して立教の学生は授業で見ています。
教会ではこのイヴの夜、信徒の人が街や村の道を「クリスマスキャロル(クリスマスの歌)」を歌いながら歩き、これを「キャロリング」と言います。以前私が働いていたヨークシャーの村の教会でも、毎年キャロリングをして村中を回りました。大きな棒の先にカンテラを結び点灯して先頭に立ち、これに子供たちも沢山参加して大きな声で歌い村中を歩き回ります。村の人々もこれを毎年楽しみにして、チャリティー献金をしたり子供たちにお菓子を用意したりしてくれます。これは本当に楽しい行事です。
そして二十五日「クリスマスの日」の午前零時、人々はそのまま教会に戻りクリスマスの最初の礼拝に参加します。「クリスマス」とは「キリスト・マス(礼拝:聖餐式)」、この礼拝のことを指している言葉です。この日にはこの他に、午前七~八時と、午前十時に、計三回の礼拝がもたれます。この日全ての会社や商店も休みで街はひっそりして、まるで日本のお正月元旦のようです。ただ教会の鐘の音だけが大きく村中に鳴り響きます。人々はこの礼拝から帰り、昼には長い間考え用意した「クリスマスディナー」をどの家でも楽しみます。
二十六日は「ボクシングデー」です。貰ったクリスマスプレゼントはこの日まで開かないでクリスマスツリーの下に飾り、この日になって初めて開きます。子供たちの一年で最も嬉しい日で、「スーパー、グレイト」などと叫びながら子供たちはプレゼントを開きます。
立教ではクリスマスの日は既に冬期休暇に入っているので、早めに学期の最後にクリスマス行事を行います。食堂には大きなクリスマスツリーを飾り、長い間クリスマスキャロルを繰り返し練習します。そして終業礼拝の前日「キャロリング」を行います、ここ数年は近くの「老人ホーム」をバスで訪ね、クリスマスキャロルや日本の歌を合唱しお祈りもします。沢山のお年寄りたちがこれを楽しみに集まり、最後には「本当に嬉しかった」と喜んでくれます。生徒にとっても、こうしたイギリスのお年寄りと交流する機会は大変貴重な経験だと思います。その後で生徒たちはまた学校に戻り、最後の夜をケンブリッジのキングスカレッジと同じような「クリスマス礼拝」を礼拝堂で捧げてお祝いします。他では出来ないようなこのキャロリングとクリスマス礼拝は、生徒にとって生涯忘れられないような素晴らしい経験でしょう。