4時間目の授業が終わり昼食の鐘が鳴り始めるとホールの入口で歓声があがった。
「すごい!H先輩本当に合格しちゃったよ!」
「どこ、どこ!」
「ほら、上の列の一番左!」
「東京外語大!」
あっという間に人だかりが出来た。毎年この時期になるとダイニング入口のホールに、日本で受験をしていた高校3年生たちの努力の成果が貼り出される。立教大学を始め、早稲田、上智、青山学院… etc. 先学期までここで一緒に生活していた先輩達の名前が「祝合格」の文字の下に合格大学名とともに記され次々と掲示されていくのは毎年後輩たちの良い刺激になっている。
その先輩たちが卒業式のために次々と帰ってきた。今年は14名の高校3年生が式に参列する。久しぶりに出会えた赤ネクタイの先輩たちと楽しそうに話をする生徒たち。でも実は、先輩達のいなかったこの3学期に、彼らはもう既に新学年のそれぞれの目標に向けて歩み始めていた…
丁度この日はEC(英会話)の授業で最も頑張った学年の生徒達にSpecial Dinnerが用意される日でもあった。白いテーブルクロスがかけられた特別テーブルには他のテーブルとは違う飲み物やデザートが並び、そこで6人のイギリス人の先生と一緒に特別な昼食をとる。今学期この栄光にあずかったのが高校2年生。高3の先輩たちがいなかった間にしっかりと最高学年の貫禄をつけてきた。毎晩12時までの自習、先生方の代わりを勤めるテーブルマスター、礼拝のアコライト、そしてECの授業ではElmbridge Villageを訪れ老人達と積極的に懇談もした。それらの努力が形に現れた栄光だった。
「ずっと楽しみにしていたスペシャルディナー、やっととれました!」
「来学期も絶対私たち!」
目標を持って取り組んでいることに少しずつ自信が持てるようになってきた彼ら。今週末の卒業式で先輩たちを見送り、後輩達が帰宅したあとは1週間の特別補習を受け、高校3年生になる春を迎える。4月に帰寮して赤ネクタイをもらうといよいよ本格的な受験勉強の始まりだ。
ホール入口のあの掲示板に「祝合格」と書かれた彼らの名前が載る日もそう遠い日のことではない。