皆さんご卒業おめでとうございます。
また、ご列席のご両親を始め、皆様に心からお祝い申し上げます。まず、卒業生諸君へお願いしたい事があります。それは今までいつくしみ、育んでくださり、永年に亘り授業料を払っていただいたご両親様に対し、この節目に際し、感謝を申し上げてほしい。
大学の卒業証書を、郷里に戻って父親に見せた時、父親は笑顔で唯一言、「ずいぶん高くついた領収書だな。」と言われた人がいます。また、自分の子供を学校に出すようになって、親の苦労と愛情を改めて痛感した人がいます。
さて、諸君の多くは大学へ進まれると伺っていますが、大学とは一体何をする所か、今のうちからちょっと考えてみたい。入学案内を読むとほとんどの大学は、「専門性のある教養人」を育てることを目標に掲げています。専門性ある教養人を説明する際、私はギリシア時代医者の元祖といわれたヒポクラテスを例にします。著書『弟子との対話』の中に、「先生、医者とはどんな人間を指すのですか?」の問いに対し、「医者とは、病気を治す人だよ。」弟子は続けて「それだけですか?」ヒポクラテスは、「良い質問だ。医者とは病気を治す人であり、病人を治す人である。」と答えた。ご承知の通り、医者は病気を治す為に、外科、内科等の専門的知識が必要であると同時に、患者とコミュニケーションを深め、信頼関係を築くことにより、生活習慣を把握し、原因を探る幅広い能力―いわゆる人間としての教養―が求められます。
教養とは何か、教養人とはどんな人であるか、大学での専門科目はもとより、歴史、文化、社会等広汎な知識を、知的好奇心を持って、身に付ける大学生活を積極的に過ごしてほしい。努努最後のレジャーランドと考えないでほしい。世に教養人といわれる人は、いかなる青春時代を過ごしたかというと、1月15日の日曜礼拝の際、少しお話しましたが、
①人との出会いを大切にすること。
そこには、衝突や面白くないことも度々あるだろうけれども、タイプの違う人間と一緒に過ごす時間は、きっと諸君を成長させてくれると思います。寮生活を過ごした諸君は既に十分な経験をつんでいると思います。
②本との出会いを積極的に持つこと。
本は自分の経験を何十倍にも広げてくれ、且つ知識と思考力を付けてくれます。
③自然との出会いを大切にする。
美しい自然は、多くの感動を与えてくれますが、一瞬にして何千、何万の尊い生命を奪う恐ろしさがあることは、言うまでもないことです。
これから迎える四年間は、人間として最も成長する期間です。これから中学校、高校に進む方も含め、最後に一言、くじけず、あきらめず、自信を持って、そして皆さん、
GOOD LUCK!
立教学院理事長・立教英国学院理事会議長
糸魚川 順