立教の森を抜け、その奥に広がる高い木々に囲まれた林には、この季節、人知れずひっそりと広がる紫色の絨毯があります。紫色の小さなベルの形をした花が一面に広がるブルーベルの林です。毎年入学式前後に一斉に咲き始めるのですが、今年は連日雨模様の寒い日が続いたため、林がうっすらと紫色になりかけたのが5月に入ってから。新入生を迎える恒例のブルーベル散策も延び延びになっていました。しかも今年はほとんど毎日降り続く雨で林の中の小道はぬかるみばかり。少し雨が止んだところでとても全校で歩ける状態ではありませんでした。ここ数十年、一度も欠かしたことのないブルーベル見学が今年は本当になくなってしまうかも知れない… 毎日空とにらめっこの日々でした。
そして、5月8日火曜日。午前中から珍しく雨がやみ、曇り空ながらうっすらと明るくなると、校長先生が「このまま天気が持てば、放課後にブルーベル散策に出掛けましょう」と先生方に連絡。最後の授業の先生方が生徒たちに連絡をして、「放課後靴を履き替えて中庭に集合!」の伝言が伝わりました。
「えーっ、泥だらけですよー!」「本当に行くんですかぁ??」と前からいる生徒たち。
「ブルーベリー?」(ブルーベルです!)「とってもきれいなんですよね!!」とちょっと目を輝かせる新入生達…
思いは複雑ですが、とにかく例年通り、まずは立教の森に向けてスタート!
いつの間にか空は晴れ渡り、久々の日差しが木々の間に降り注いでいました。水分をたっぷりと含んだ林の中はどこかしっとりとしていて、鳥達のさえずりも嬉しそうに響き渡ります。そしてその中で、立教生達の悲鳴?!と歓声もこだましていました。水をたっぷり含んだ道はもちろん泥だらけ。平らな道を歩くのも慎重に行かないとすぐに転んでしまいそうなほどのぬかるみです。履き替えてきた運動靴もすでにどろどろ。一歩進むのにいつもの3倍ぐらいの時間がかかるぬかるみを、長い列を作って進んでいきました。半分大はしゃぎの小中学生、童心に戻って同じようにエキサイトする高校生、そして苦笑いしながら子ども達と一緒に歩く先生方。いつもの写真スポットにつく頃には皆泥まみれの靴に泥の跳ね返りがたくさんついたジャージ… でもいつもと同じ笑顔で記念撮影ができました。
ある新入生が、その日の学級日誌に書いていたコメント:
ブルーベルも凄かったけど、あの泥の中を行ってしまう立教も凄いと思った…
かくして今年もブルーベル見学が終わり、生徒たちも全員無事?帰校。森を歩いていた頃から急に広がった青空は久々にキャンパスを美しく彩り、帰寮後に生徒たちが必死に洗っていた運動靴が寮の玄関前のあちこちに並べられて午後の低い日の光にキラキラと輝いていました。