【連載】UCL Japan Youth Challenge 2019 報告会より③

【連載】UCL Japan Youth Challenge 2019 報告会より③ 【連載】UCL Japan Youth Challenge 2019 報告会より③

グランドチャレンジの参加者はみんなが最初から友達だったわけではありません。もちろん10日間ずっと一緒に過ごした友達もいましたが、グランドチャレンジだけに参加した人もいたので、その日に初めて会った人にも自分の意見を言わなければいけませんでした。もしもこのディスカッションが私の母国語である日本語であれば伝えやすかったかもしれませんが、英語で行なわなければいけなかったということは私にとって大きな挑戦でした。

このプログラムの参加者の多くの日本人の学生は帰国子女など英語力に問題のない人が多いなか、私は自分の拙い英語で意見を伝えるということがとてもきつかったです。今までは英語ができる人の前で発言する時に、彼らが私の話す英語を聞いて何を思っているんだろう、と考えてしまい話すことが怖かったです。しかし、せっかくこのプログラムに参加しているのだから克服したいと思い、グランドチャレンジの発表の場でみんなに向かって自分のグループの意見を発表しました。特に難しいことを言ったわけではありませんが、その経験で少し自信を持つことが出来ました。

また、合計20以上の講義を受けましたが、その講義の質疑応答の時間で講義をしてくださった方に直接質問をする機会がありました。私は日本語であっても講義の場で質問をすることにかなり抵抗があったのですが、英語で全体の場で質問することが出来てとても良い経験になりました。また、この10日間を日本やイギリスの様々なところから集まった人と話したり友達になったりしたことで色々な意見や考え方を知ることが出来ました。日本から来た高校生と将来の夢について話す機会があったのですが、高校1、2年生なのに将来の夢がしっかり決まっていて、しかも宇宙飛行士や外交官など今まで私の身近に目指している人がいなかった職業だったので、とても驚いたのと同時に私もしっかりと自分の将来について考えようと思いました。

私は高校3年生なのであと3か月でこの学校を卒業し大学に進学する予定です。このプログラムに参加したときには大学で学びたいことが自分の中で決まっていましたが、実は本当にこの分野を専門として良いのか少し迷いがありました。しかし、このプログラムに参加し、色々な考え方や意見を持っている人と知り合い、話をしたことで、私の中ではっきりと自分が学びたいことは本当にこの分野なんだと確信することが出来ました。それが今回私がこのプログラムに参加したことで得ることのできた1番の収穫です。

(高等部3年生 女子)

私にとって一番印象に残った講義はシンポジウムで聞いたCatherine Holloway Academic Director of UCL Global Disability Innovation Hubによる講義でした。この講義では、障碍者の方々が社会でどのようなバリアに直面しているのか、健常者と障碍者のあいだで物事の認識の違いなどをお話ししていただきました。イギリスでは、車椅子が必要な障碍者には政府から手動車椅子が支給されます。しかし、そのほとんどが障碍者により捨てられてしまうというCatherineさんの最初の一言は衝撃でした。その主な理由は、体に合わず腱鞘炎や腰痛を発症してしまうから、一人での移動が難しいからだそうです。車椅子を手放した障碍者の方は、電動のものを買い何とか生活する方もいますが、電動車椅子は高価なものなので、大半の人が自力での生活をあきらめ、ふさぎ込みがちになり、社会から孤立してしまうのです。このように健常者はよいと思い車いすを支給しますが、実際は助けになっていないのです。

このようなケースは、バリアフリーやユニバーサルデザインにおいても建設が健常者であるが故によくあるそうです。例えば、バリアフリーと思って作ったスロープが急すぎて車いすでは乗り越えられなかったり、目が見えない人のための点字ブロックがホームの際にありすぎてかえって危険だったりなどです。今回のUCLのテーマであり、今世界が目標とするみんながアクセスできる社会を目指すには、このような障碍者の社会からの孤立を防ぐ必要があります。そのためには、もちろんバリアフリーやユニバーサルデザインの十分な導入は大きな課題ですが、これらの設置が問題の解決策だと思うのは大きな落とし穴だということにCatherineさんの講義で気づかされました。障碍者と健常者がコミュニケーションをとり、お互いに相手を理解しなくては障碍者が直面しているバリアは壊せないのです。

Catherineさんの講義を通して、しっかりと正しい知識を持ち、相手の立場に立って考えると全く違うことがみえてくるのだと身をもって学びました。また、この講義だけでなく、UCLのプログラム全体を通して、自分の意見を持つこと、自分の無知さを知ること、相手の意見や新しい情報を取り入れること、この三つのバランスが取れることの重要さを知ることができました。このUCLプログラムは私にとっては緊張したり、参加する前は不安に思っていたこともありましたが、始まると一緒に参加した高校生にたくさんの刺激を受け、興味深い講義をたくさん体験できてとても楽しかったです。

(高等部2年生 女子)