劇企画「舞台裏」

劇企画「舞台裏」 劇企画「舞台裏」

オープンデイ当日、私がその日最初に捨てたものは自分で描いた作品だった。

初めてのオープンデイ。私は劇企画で大道具をしていた。私は絵を描くのが得意だったから、劇で使う背景のデザイン、下書きを任されていた。
人から任されるのはとても嬉しい事だった。すぐに作業を始めたけれど、一人で全てやるのはとても難しかった。
デザインのアイデアが浮かばない時はパソコンで写真を見たり、誰かに聞いてみたりしたけれど、漠然とした事しか言われなかったり、いざ模造紙に描こうとするとが紙が横に長過ぎて絵のバランスが取れなかったりと、何度も行き詰まった。
それでも、自分の描いた絵が劇で使われるのが楽しみで頑張った。

オープンデイ前日、最後のリハーサルが始まる前に大道具長の先輩から、
「背景を使うことが出来ない。」
と、とても申し訳なさそうに言われた。
理由は、背景を吊るすための竿が作れていない事と、背景を吊るしても大丈夫かどうかのチェックが出来ていないためだった。
大道具に経験者が一人しかいなかったから、間に合わなかったのは仕方のない事だった。
本番で背景が使えなくて、それまでたった一人で頑張った事が全くの無駄になった事に胸は痛んだ。しかし、演者としての仕事も少しあったし、舞台に机や椅子を出したりする大道具の仕事もあった。感傷に浸ってはいられなかった。
リハーサルが終わり、少し落ち着けたから本番はスッキリした気持ちで望めた。
本番は成功し、カーテンコールのためにカーテンを開け締めしている時、劇企画に参加していたことがとても誇らしく思えた。

大成功した本番に私の作品もあったら良かったな、という思いは今でもある。
大道具が背景を作ろうとしていた事なんて知らない人の方が多いかも知れない。
私が一人で頑張ったことなんて、ほとんどの人が知らないだろうと思う。
もう何だっていい。
この思いは来年の劇企画にぶつけようと思う。

(中学部1年生 女子)