初バンド

初バンド

「軽音やらない!?」。なんだかアニメのような冗談めいたセリフを友人から言われ最初は苦笑してしまいました。しかし、どうやらその友人は先学期のRIKKYO FESのステージ上で輝く同級生や後輩を見て憧憬の念を抱き、本気で私をバンドに誘ってきたのでした。私自身、中学校では吹奏楽部に所属し、立教ではサックスをしていたりと昔から楽器を演奏することは好きで、弦楽器は挑戦したことがなかったので少し興味を持ったのですが、何せ人前に立つことが昔から苦手だったため正直ちょっと参加を渋っていました。しかし、彼女のあまりにも熱く頑固な思いに私は折れ、バンドを組むことを決めました。同級生のほとんどが軽音部に入っていたため、彼女に誘われてできた私のバンドメンバーは、言ってしまえば寄せ集めた残り物にすぎませんでした。最初はバンド名や演奏曲がなかなか決まらなかったり、報連相がうまくいってなかったり、冬休み中も音信不通の人がいたり、照明案がぎりぎりだったりと、本当に先が不安すぎるバンドでした。

各自でどのくらい練習したかわからない状態で迎えた初めてのハット練。自分含め正直心配でしょうがなかったです。でも、合わせてみると想像以上に良い一曲ができていて驚きました。これは初めてにしては結構良いのではないか。私達は調子に乗りました。(それは良いように言い換えると)「自信」を持つようになったのです。そこから本番まで不完全ではあるものの、私達は自分たちの演奏に自信しかない状態で、それをさらにより良いものにするために改善に改善を重ねました。そして迎えた本番。ほぼ全員がスクコン経験者だったからか、舞台に立つことは初めてではないようで、みんな緊張はしていませんでした。私は初めて軽音の舞台に立ってみて初めて、人前で何かを披露することが「楽しい」と感じました。今まで、ピアノの発表会やスクールコンサート、授業内のプレゼンテーションなど、人前で披露・発表することは私にとって「苦」でしかありませんでした。しかしどうでしょう。スクールコンサートでソロをしたときと同じステージであるはずなのに、見える景色や感情が全く違いました。不思議でしたが、その違いは多分観客の温度や雰囲気にありました。スクコンでは決して騒いではいけない厳かな空気が流れています。しかしRIKKYO FESではみんなが騒ぎ叫び盛り上げてくれます。ライブに出演していなかったときの私にはわかりませんでしたが、そこで初めて、盛り上げてくれる「観客」の大切さというものを知りました。観客が盛り上げてくれると自然と演奏中でも口角が上がり、写真写りすら良くしてくれます。演奏者が主人公で、観客は引き立てる脇役だと思っていたのですが、逆に観客はその物語全体の面白さを左右する鍵を握る重要なキーパーソンであることに気づくことができました。

私達はあと2回しか出場できません。もちろん私達が楽しむことが一番ですが、それは全て見てくれている「観客」のおかげであることをしっかりと理解し、残りのライブも全力で素晴らしいものを作り上げていこうと思います。

(高等部2年女子)