「残り香」

「残り香」

 オープンデーから三日たった教室は、机と椅子だけの簡素な部屋へと戻っていた。しかし、注意してよく見てみると、所々に剥がされていないテープや、掃除機で吸い取れなかった切れ端があることに気付かされる。こういった時、普段なら自然と手を伸ばして捨ててしまうのだが、どうしても頭の中で映画の様にたどたどしく流れ…
「オープンデーの思い出」

「オープンデーの思い出」

 ドラムロールが早まっていくと同時に自分の心拍数もバクバクとあがって行くのが分かった。ドラムロールが止まり周りが一気に静まりかえった。そしてまさかの総合優勝第一位。  「せーのっ。」 初めてだった。くす玉を割ったのも、こんなにクラス全員で喜びあったのも。毎年やってくる立教最大イベント、オープ…
『オープンデーが終わって』

『オープンデーが終わって』

 オープンデーを経験して一番思ったことは楽しむことは大切ということだ。  オープンデーの準備期間中、良いアイディアが思い浮かばなかったり、思い浮かんだアイディアをなかなか形にすることができなかったり、楽しくない作業ばかりでつまらなかったり、みんなお互いにいろいろな不満を持ち、友達関係がギクシャクし…
『有終の美』

『有終の美』

 「模造紙部門第1位は...(ダカダカダカダカダカダカダカダカ・・・ダン!)高等部1年 世界はこれをトイレと呼ぶんだぜ」  これを聞いた時、とび上がって喜んで興奮がおさまらなかった。  私は、OPEN DAYで模造紙班として活動した。字が汚く、サボりぐせのある私は、大きな仕事はもらえず、最初…
『人との関わり』

『人との関わり』

「日本人の方ですか?」 突然、流暢な日本語でそう話しかけられた。私は自分が立っている場所を思い返した。 イギリス、ケンブリッジ、マーケットの近くのサブウェイの目の前。私は咄嗟のできごとに困惑し、頭の回転が止まった。 かろうじて 「えっ?」 という声を発することができた。すると彼女はもう…
「最後」

「最後」

あー、もう最後のアウティングだ、そう誰かの呟き声が耳に入ってきた。私は耳を疑った。正直まだ信じることができなかった。「最後」という言葉が引っかかったのだ。1年前から覚悟はしていた。これから行うすべての行事がもう「最後」なのだと。オープンデイのクラス企画、合唱コンクール、球技大会... 一つ一つ終わっ…
「満たされる」

「満たされる」

高3最後のアウティングは綺麗な晴れ空で風が少し肌寒い。ロンドン・アイに乗り込んで徐々に地面が遠くなる。もう何回目だろうか、そんなことを考えていた。皆がはしゃいでいる。なんだか子供みたいだった。それは私も含めて。2組だけとは言え、皆でどこかへ行くのも最後なのだと思うと少し寂しい。立教英国という特別な環…
『晩禱』

『晩禱』

チャペルに入ると、壁一面に色鮮やかなステンドグラスが広がっていた。 高い天井に沢山の柱や像、今まで見たことのある教会とは桁違いのスケールだ。 今回のアウティングの行き先はケンブリッジだった。 ガイドツアーや買い物など色々楽しみはあったが、特に印象に残ったのはチャペルでの晩禱だ。 キン…
ケンブリッジ大学サイエンスワークショップ

ケンブリッジ大学サイエンスワークショップ

この夏僕は、二つのサイエンスワークショップに参加した。それによってこの夏は学びの多いものになった。その内の一つがケンブリッジ大学でのものだ。 期待と不安を抱きながら日本から参加する生徒が来るのを待った。その夜の自己紹介は、予想通りでありながらも、衝撃的であった。五つの目がある化石が好きという人…
夏の終わり

夏の終わり

夏休みが終わる直前、僕は模試を受けた。夏やってきたことを全て出すべき場であった。だから、僕は相当な気合いを入れていた。しかし結果は最悪。 僕は夏、もし勉強していたかと聞かれたら、した、と十分答えられるくらい勉強した。僕には夏の勉強に関すること全てを記録したノートがある。きちんと計算したことはな…