帰る場所

帰る場所

iPhoneを使えない。恋愛禁止に近い妙なルールがある。外出の機会はほとんどなく、ロンドンに行くことが出来るのは学期に一度だけ。先生と四六時中過ごさなければならないし、プライベートとは無縁に近い... 時折こうして立教英国学院のことを日本の友達に話す。皆初めは普通とかけ離れたこの学校に興味を示すが…
高校3年生、2学期を迎えた今

高校3年生、2学期を迎えた今

日本より少し肌寒い。空港から学校に着きバスから降りると、先に着いた生徒が夕食を食べている。そして周りを見渡すと、自然豊かな美しい緑が広がっている。こんな環境の中での「大家族」生活も、高校3年生にとっては今学期で最後だ。そう思うと、立教での生活は、とても早く感じた。 立教では、オープンデイや、球…
特別な夏休み

特別な夏休み

私がすでに日本に帰る頃には夏休み、残り1ヶ月。空港についた瞬間に日本の夏特有のあの熱気が私の頰を撫でた。みんな勉強してるし、私もやらなきゃなぁ、なんて思いながらも自分の家に帰った喜びで、つい色々な誘惑に負けそうになる。それに日本の夏は暑いったらありゃしない。こんなんで集中できるか、と何とかして勉強が…
ふと、思う。

ふと、思う。

夏。28度、いや、それ以上かも分からない。とにかく暑い。イギリスなのに。そんな愚痴を吐く。朝からしていた勉強も集中が切れてしまった。一休みと団扇片手に空を眺めた。ふと気付く。そういえばイギリスで過ごす夏はこれが最後なのだと。あぁ、もう4年目になっていたのか。 特に立教の3年間は早かった。高校1…
与えられたもの

与えられたもの

ふと目線を上げ、見慣れた白い文字盤をぼんやりとした意識の中確認する。時刻は午後11時40分。いつからだろうか、一日が終わる度に、「あぁ、また終わってしまう。」と感じるようになったのは。 この頃、誰もが知識としては持っているであろうごくごく普通のことに、実感とともに気付きつつある。自らを取り囲む…
お先真っ暗受験デイズ

お先真っ暗受験デイズ

虚無感。僕の高校最後の、高校3年生としての夏休みを振り返るなら、この一言に尽きる。 受験生の夏休みは天王山と呼ばれている。もちろん僕は夏休みの間、天王山を登っていた。いや、登っていたつもりだったかもしれない。なぜならいくら登っても登ってもまったく山頂が見えてこなかったのだ。そうして時間が過ぎて…
久しぶりのロンドン

久しぶりのロンドン

 サイエンスワークショップに参加する私を含めた四人は、リンネ学会、王立研究所、梶田先生の特別講演に訪れるべくロンドンに外出しました。  リンネ学会とは、スウェーデンの博物学者カール・フォン・リンネに由来し、現存する世界で最も古い博物学の協会です。「自然選択説による進化論」は、リンネ協会の会合で初め…
「イタダキ」

「イタダキ」

 僕の前には多分、今まで生きてきた中で打ち当たった一番高い壁'高校受験'が、その太い胴体を堂々とかまえて聳え立っている。どれ程の高さなのかなど、見当もつかない。その高さ、険しさに圧倒されて一歩後ずさりしながら考えた。  僕の正面には、地底から山を貫いて空に打ちつけられたくぎのような岩が見える。…
貴重な体験

貴重な体験

七月四日、僕たちはノーベル物理学賞を授与された梶田先生の話をロンドン日本大使館で聞きました。ただその日に話を聞くだけでは話の内容が良くわからないと思い、僕たちは梶田さんがノーベル物理学賞を授与されたスーパーカミオカンデとニュートリノについて調べることにしました。 正直に言って調べる前はどうせ話が難…
「泡沫の美」

「泡沫の美」

 毒々しいくらいの真紅に染まり、剥き出しになった「ソレ」を前に、私は心を奪われていた。  「ドン。」  大きな爆発音。ようやく我に返り視線を上げる。そこには絶えることなくつぎつぎと夜空に咲き乱れる満開の花々。咲いては散り行きそして一瞬にして全てを出しきる。微かな火薬の匂いと共に今年も美しく、盛大…