「あっけないな。」
高校3年生である僕にとって最後の球技大会、思っていた終わり方とは、少し違っていた。
高校1年で立教に入ってきて、まず初めの行事が球技大会。球技種目には、小学校からやっていたバスケットボールを選んだ。鮮明に覚えているのが、先輩の後ろ姿である。自分のチームの高校3年の先輩が、残り2秒で逆転スリーポイントを決めた時だ。僕はその時、先輩の背中が、僕に何かを訴えかけているような感じがした。
高校2年になり、その年もバスケットボールを選んだ。このときの球技大会で僕は、去年の先輩の背中が言ったことをはっきりと理解できた。
この年の試合も接戦だった。残り10秒、僕らのチームは、2点差で勝っていた。残り10秒、相手の高校3年のキャプテンがゴールに向かって切れ込んできた。マークしていた僕は、相手の動きを完全に読んでいた。よし、抑えた。思った通り、放ったシュートはリングにきらわれ、リバウンドを取ろうと思った瞬間、目の前が黒くなった。僕はその黒いものに空中であたり、コートに着地した。
「ピー。」
ホイッスルが体育館に鳴り響いた。目の前が明るくなった僕の目に映ったのは、ボールがゴールに吸い込まれているところだった。
バスケットカウント。つまり3点プレイだった。フリースローをしっかり決められ逆転。その時だった。フリースローを打った先輩の姿と去年の先輩の姿が重なった。
その時、僕は、先輩の強さ、自覚というものを先輩の背中から感じとった。
今年の球技大会、高校3年生となり、バスケットボールのキャプテンとなった。試合は、2試合とも勝った。そしてMVPも取った。結果としては、最高のものだったと思う。だが、球技大会が終わって落ち着くと、ふと2人の先輩の背中を思い出す。
「背中で語れる先輩か。」
後輩からどう自分が映ったかは分からない。しかし、自分は、背中では何も語ることができなかったと思っている。自分自身で一杯だった。
試合には勝った。しかし、先輩としての自覚という壁には勝てなかったということだ。
最上級生となり早1ヵ月。なんとなくだが自覚は芽生えてきた。背中で語れる先輩、そして、最終的には背中で語れる学年ができればと思う。
残り少ない立教生活、先輩として後輩に何を残していけるか考えていきたい。
(高等部3年生 男子)