虚無感。僕の高校最後の、高校3年生としての夏休みを振り返るなら、この一言に尽きる。
受験生の夏休みは天王山と呼ばれている。もちろん僕は夏休みの間、天王山を登っていた。いや、登っていたつもりだったかもしれない。なぜならいくら登っても登ってもまったく山頂が見えてこなかったのだ。そうして時間が過ぎていき、夏休みが終わった。そこで夏休みに登った分の標高を山頂として考えてみたら、実は高尾山ぐらいの高さを登っただけだったかも知れないと思ったのだ。確かに勉強はコツコツと進めていったはずだった。しかし自分の実力が自分の思っていたよりずっと伸びなかったためにこんな思いをしているのだろう。
しかし、学校や塾の先生たちは大丈夫だと、これからちゃんと伸びてくると言う。受験生初心者の僕にとってこれから先はずっと真っ暗だ。ゆっくりと、ちゃんと道があるかどうかを確かめながら前に進みたい僕に彼らはこう言い放つ。
「信じて真っ直ぐ走れ。道が途中で断たれていたなら、その時にまた考えればいい。」
正直なところそんな言葉は信用できない。だが彼らが今までたくさんの受験生に対してその言葉をかけ、実際にその通りにしてゴールへたどり着いた受験生がいるのは確かだ。であれば、それを信じるしかない。実際に成果が出ているのだから。
とても怖い。当たり前だ。役に立つかもわからない道具を持って何も見えない暗い道を疾走しようというのだ。怖くない人がいるだろうか。
しかし、想像してしまうのだ。何万、何十万という受験生に打ち勝ち、見事志望校に合格する自分の姿を。
(高等部3年生 男子)