ロンドン

ロンドン ロンドン
ゆっくりと自分とクラスメイト達を乗せて上昇していくカプセルの中で、僕はぼんやりとロンドンの街並みを眺めていた。
実はイギリスに来てから、ロンドン・アイに乗ったのはそれが初めてではなかった。最初にあの巨大な観覧車に乗ったのは、2年半ほど前、入学式より数日早くイギリスを訪れ、母とロンドン観光をしていた時のことだ。
あの時の僕には、目に映るもの全てが新鮮で、素晴らしいものに思えた。排気ガスで淀んだ空も、道端に転がるたくさんのゴミも、路傍で手を差し伸べる老いた物乞いも、キラキラした風景に覆い隠されていた。あるいは、「理想のロンドン」にそぐわないと判断されたそれらが、僕の意識の外に追いやられていただけなのかも知れない。
それから月日は経ち、未だに僅かな高揚感は覚えるものの、幾分か冷静にその街を歩けるようになった僕は、2年半前とは少し違った見方で、ヨーロッパにおける経済や流通の中心である大都市を眺められるようになった。
次にそこを訪れる時、僕はおそらく一留学生としてそこにいるだろう。そうなった場合見えてくるであろう、今とはまた少し違った立場から見たロンドンの街並みは、どのような色を帯びて僕に魅せてくれるのだろうか。
(高等部3年生 男子)