「ラストの始まり」

「ラストの始まり」
 高校3年生が学校にいないとこんなにも静かになるのかと思うくらい、しんと静まり返った立教。最高学年という実感もあまりわかないまま、とうとう高2の3学期が始まってしまった。私たちが立教生として行う行事も今学期からは一つ一つがラストになる。
 そんな3学期が始まって1週間経った週末、カルタ大会に続いて合唱コンクールがラストを迎えた。結果は金賞。やっと最高学年らしい結果を出せた。当たり前だ。見ていた人はきっとそう思っただろう。しかし、少なくとも私は、そんな気持ちではなかった。
 高1の3学期、合唱コンクールリハーサルの日。歌詞は見ないとわからない。15分しかないリハーサルでふざけている。生徒会には、こんなんじゃ本番に出したくないと言われた。状態が状態だったから、私の頭には言い返す言葉も、お願いだから出させてほしいという思いも全く生まれなかった。結局は本番に出させてもらえたものの、当時の高2のクオリティーの高さや、皆の団結力に圧倒されて終わった。賞は一つも取れなかった。
 そして高2になり、合唱コンクールの練習が始まった。練習初日、昨年練習に集まらなかった人達がちゃんと集まっていた。それだけで感動した。しかし、そんな感動もつかの間、問題は起こった。約1週間しかない練習期間の内2日が過ぎた日の夜、男子の目論見によって歌う曲が変わった。女子が少ないこの学年では、いくら女子が反論しても多数決を取れば負ける。そんなことはみんな分かっていることだったから、女子は文句ひとつ言わない。というより言えなかった。練習の空気が重たかった。
 それでも、少ない練習期間で、曲は着実に完成へと向かっていった。途中ヴァイオリンを入れたり、ラップ部分は聖歌指導の4人のソロにしたり、曲がしっかり私たちの学年のものになっていくのを感じた。
 だから、私たちの金賞は、高2だから、最高学年だから、と当たり前に取った賞ではない。オープンデーで逃した総合優勝のように、後輩達に追い越される可能性が十分にあった私たちが取った金賞であったから、その紙一枚の賞状がとても嬉しかったのだ。そしてもし時間が戻せるなら、あの、笑顔が自然とこぼれるくらい楽しかった本番をもう一度したい、もう一度歌いたいと、そう思う。
 私たちのラストの始まりは、いかにも私達らしくあったが、しっかりとラストにふさわしいものになったと強く感じた。
(高等部2年生 女子)