準備

準備

ガランと空いた教室。誰もいない空間。高校3年生を見送った私たちはその隙間を埋めるかのようにこの教室に入り込んだ。
何の変哲もないただの教室。いつものクラスメイト。それなのにどうしてか。違和感を覚えてしまう。この慣れない空間のせいなのだろうか。

噛み切れない何かを口に入れてしまったかのようだった。噛んでも噛んでも口から消えることはなかった。そして味だけが薄れていく。そして私はそれを吐き出した。吐き出したものは純粋な不安だった。高校3年生がいなくなってついに自分たちが最高学年になる。今までの立教生活において今年が初めてとなるこの経験を私はまだ受け入れられていなかったのだ。
「人生は今の自分の継続の繰り返し」
私が高校1年生の時、古文の先生がこう言ったのがすごく印象的で未だに覚えている言葉だ。何かの節目に今と違ったもっと理想的な自分ができている。つまり、4月になったらきっと自分は立派な高校3年生になっている。と今考えていたとしても、4月になり高校3年生になった自分は立派になれていないだろう。高校生までにはこうなろうなど色々な思いを抱いては結局はただの願いになってしまっていた当時の私には、心の隙を突かれた様でギクリとした覚えがある。

今までに無い経験を少しずつ増やしていく中、これからもまた多くの不安が出てくるだろう。そしてそれは、紛れもなく今の自分が思っていることだ。今は自分が最高学年という意識を持ち、今の高校3年生が残していった「活気」というものを受け継ぎ、彼らがいた安心感を作り、縁の下の力持ちとでも言うのだろうか、そんな学校の土台となれるように少しずつ、少しずつ自分を変えていきたい。高校3年生への準備をこの高校2年生最後の今から始めて、私たちの継続の結果が来学期へとつながるよう頑張っていこうと思う。

(高等部2年生 女子)