合唱コンクールという行事は日本の中学校に通ったことのない僕にとって、初めての経験だった。しかし、それはこの立教英国学院においても同じだった。合唱コンクールはこの学校で今年から始まった行事なのだ。
中3の自分達が歌う曲は「時の旅人」だ。どの曲を歌うかを知らなかった僕にとって、3学期が始まってから2週間後には合唱コンクールがあるというのは厳しい状況だった。だが、そういう状況下でも「なんとかなるだろう」とどこかで思っていて、練習を熱心にやる気にはならなかった。
しかし、すぐにそんな事を言っていられないという事に、全員で歌ってみて気がついた。今の中3は女子が10人いるのに対して、男子はたったの5人でその内の一人はピアノを弾くので歌うのは4人だけなのだ。練習では完全に声量で負けてしまって、男子の声が聞こえなくなっていた。このままだらだらと練習をしていて本番がきてしまったらまずい。ようやく自分の中にも危機感が現れた。
それからは、僕や他の男子も真面目に練習に取り組んだ。そして本番3日前くらいには皆声が出るようになり、音程も取れるようになった。だが満足はしていなかった。他の学年の練習を聞いていたからだ。皆、すごく上手で、自分達の歌っているものとは大分差があった。その後は皆、本番まで一生懸命に練習し、高等部に負けないように頑張った。
そして1月24日、遂に合唱コンクールが始まった。大勢の前で歌うのは初めてで、自分達の番が近づくにつれて緊張が増していった。そして中2の番が終わり、自分達がステージに上った。たくさんの照明を当てられ、人々の視線を感じた。だがその頃には、練習通りにやればきっと成功すると思っていたので自然と緊張は薄れていた。
本番では間違えもなく声も出ていて、良い形で歌い切る事ができた。そしてステージを下りると、一気に緊張から解放され、達成感が込み上げてきた。一生懸命練習したかいがあったと実感した。
他の学年の歌を全て聞いて、次の日の夕食後に順位の発表があった。三位は高1−1、二位は高2、そして一位は高1−1と、惜しくも中3は入れなかったが皆で楽しく歌えたという達成感が得られて、初めての合唱コンクールは僕にとってすごく良い体験となった。
(中学部3年生 男子)