私は今から3年前にパリという異国の地に足を踏み入れた。
そこは、その地を芸術で満たしており、少し歩けば彫刻や絵に出会う事ができる。今日はその中の一つについて書きたい。
私の家からバスに乗って数十分。ルーブルの正門を通ってもっと進むと、正面に有名な建物が見えてくる。
オペラ座、実名ガルニエ宮はその美しい柱と彫刻のお陰で、見えた側が正面だと誤解している者が多いが、本当の正面はあまりぱっとしない所にある。私もそれを知った時に大いに驚いた。
さて、その驚きを隠そうと平常を装いながら中に入った私を待っていたのは、大理石でできた階段と、美しい彫刻の数々だった。大階段だ。そして、私はその美しさに唖然としてしまい、必死に塞いでいたはずの口が開いてしまった。所々でほのかに灯る蝋燭達にその美しさをよりいっそう高められた彫刻達は、薄暗い中確かに存在する、形、色がまるで緩やかに流れるバラードのように私の中に残った。そうして上を眺めてみると、美しい天井画がそこにあった。その天井画は四つに分かれていて、その柔らかい色彩で、この場所をうっとりとした気分にしてくれた。
そして、オペラ座の中を進んでいくと、二階のボックス席がある扉まできた。そこで私は心臓が高鳴るのを自分で感じた。オペラ座のボックス席に入った事がないのも、テレビの中でしか見たことの無い大きなシャンデリアもその理由の中にあるのだろうが、一番の要因はそのオペラ座の中にあるシャガールの天井画だった。実物も見たことがなく、ただ有名だという事しか知らなかった私にとって、その絵をいち早く見たいという感情ばかりが高鳴っていった。私が入ったボックス席はすべてが赤紫色で染められていた。フワフワとしたカーペットを進むと、そこには、壮大な美しさが広がっていた。
中央にある大きく、美しいシャンデリアがまず目に入り、天井を見上げると、そこには大階段に負けないくらい淡く、柔らかい色彩と美しさを持った絵があった。私はその絵の軽やかさと柔らかさに感嘆した。そして、オペラ座の中心にあるこの二つは、まるでモンティのチャルダッシュのように淡いのに激しさを含むような雰囲気を作り出していた。
ボックス席を後にして、他に見ものはないかとぶらぶらしているところ、私は金色に輝く何かを見つけた。不思議に思い近づいてみると、それは思いもよらぬものだった。
アヴァン・フォワイエと呼ばれるその廊下は息を飲むほどの美しさであった。もしかすると、シャガール天井画よりも脳裏に残っているかもしれない。すべての装飾は金色で満ちていて、さまざまな美しい天井画があり、左右にはシャンデリアが一列に(して)並んでいる。そこだけを見ればまるでベルサイユ宮殿の鏡の間のようであったが、明らかに違う点は所々に存在するシンボルマークである。よく見てみると、ハープのような弦楽器のようなそれは、お供のガイドブックによると竪琴をモチーフにしたものだった。他にもそれによれば、一見バラバラに見える天井画も音楽史をテーマにしたものであったりした。
今までガイドブックをさほど読んでいなかったが、もっとさかのぼって読んでみると、なんと大階段にあった四つの絵も音楽の寓意をイメージしているものだという。
私はそれを読んだ後、もう一度その廊下をぐるっと見渡し、大いに感動した。このガルニエ宮は音楽を他の芸術を使って、いがみ合うことなく美しく表現しているのだ。それに気づいた私はただただ、ため息をつくことしかできなかった。
(高等部2年生 女子)