結果から話すと、僕たち高1-1組はオープンデイのクラス企画で何の賞も取ることは出来なかった。確かに他のクラスのレベルは高かったが、高1-2組は総合部門で優勝し、高2も賞をたくさん取っており、高等部で何にも呼ばれなかったのは僕たちだけだった。
悔しさよりも、悲しさよりも、僕の心に湧いた一番の感情は、自分達の作ったものが否定されているような喪失感だった。その後は優勝の喜びを分かちあっている2組の生徒を見て、逃げ出したくなるような感情を受け、まるで本能的に会話からオープンデイについての話を排除した。
フリープロジェクトは大成功し、当日は1年に1度の大行事を心から楽しんだ。しかしクラス企画の失敗により、自分の中で今年のオープンデイに忘れたい過去のようなイメージがついた。それはおそらくクラスの皆も感じとっていて、まるでなかったことのようになり、楽しかったね、などと想い出にふけることはなかった。
それから五日後、メールを確認すると珍しく英文のメールが届いていた。前の学校の友人からだった。内容は、実はオープンデイに来ていた、ということだった。当日も姿を見かけなかったので、僕は非常に驚いた。聞きたいことは山程あったが、長文が苦手な僕は、楽しかった?と軽く返信をした。
やはり日本とは違い、時差が無いので返信が来るのには10分もかからなかった。そして何気なく中身を読んだ。そこには、どの展示も良かったけれど、一番楽しかったのはシンデレラだった、と書かれていた。シンデレラとは僕たちのクラスが取り扱った題材だ。一瞬お世辞かとも思ったが、彼には自分が何組かは伝えていない。それを読んだ時、僕の中にあった喪失感は消え去り、見失っていたことに気がついた。
自分は結果だけに取り憑かれていたのだ。その中でオープンデイの主旨を忘れていた。来てくれた人をもてなし、楽しんでもらうこと。少なくとも一人、僕たちのクラス企画で楽しんでもらうことができたのだ。それだけであの展示は失敗なんかではなく、限りなく成功だったのだ。この原点回帰を達成したことこそ、僕がこのオープンデイで得た最も大切なことだったのではないだろうか。
(高等部1年生 男子)