「言葉にできない」〜交換留学で切に感じたこと〜

「言葉にできない」〜交換留学で切に感じたこと〜
 気持が、思っていることが、一つ一つ全て伝えることができないことは、こんなにももどかしいなんて。今回の交換留学で切に感じたことである。
 私はフィービーという15歳の女の子とバディを組んだ。私より一つ年下とはいえ、180cm近い身長と、私たちから見たらとても大人びた顔立ちで、むしろ年上に思えた。自己紹介など一通りお互いについて話した。彼女はベジタリアンなのだそうだ。厳密にはペスカトリアンと言い、魚も卵も食べるそうだ。そして私の頭には「一週間の野菜生活か…」その思いが真っ先に駆け抜けた。どうやら豆もすごく食べるらしい。
 彼女たちをドミトリーに案内し、彼女のアンパッキングが終わるのを待った。彼女は二人の兄がいるせいか気がしっかりしている印象で両親との別れも意外とあっさり。
 今から全く知らない異文化・人の中での生活が待ち受けているのに、ものともせず、むしろとても楽しみにしているようだった。私たちにとってはこれほど安心なことはないが、私が果たして同じような振る舞いや思いで向こうに行けるか…。ちょっとあやしい。今から迎える側での交換留学が始まろうとしているのに、もう向こうでの心配を…。彼女たちの方が不安がるはずなのにむしろ逆の立場である。これがお国柄というものなのか。
 学校案内を終え、夕食。私たちは立教・ミレー特別テーブルで一週間昼・夕食を共にした。どの食事も隣のテーブルマスターの先生ににらみを効かされそうになるほど盛り上がった。やはり人は食事を通してコミュニケーションをするんだな、と改めて思った。
 ゆかたの試着からのり巻き作り、茶道、フラワーアレンジメントなどのプログラムではもちろん彼女たちはとても喜んでくれたし、私たちも楽しむことができた。だんだんと両者心の余裕が出てきて、会話もどんどん「友達のおしゃべり」になった。学校のこと、友達のこと、家族のこと…いろいろなことを話した。
 食事の席やスピーキングの時間でどんどん会話は盛り上がるようになり、どんどん話したいことがあふれてくる。と同時に、早くこの同じ気持を共有したいという思いが強くなってくる。そして伝えようとする。でも伝わらない。私のまだつたない英語力と全世界共通の身振り手振りで奮闘する。相手の子たちも理解しようと努力してくれ、伝わってはいるのだ。でも、伝わってはいない。会話が日に日にどんどん弾み、もっと打ち解けたい。その思いに比例して私が伝えたいニュアンスが伝わらないそのもどかしさは増えていく。通り一辺の、簡単な英語になってしまう。言葉が足りない。言葉が欲しい。この思いを伝えたい。こんなにも言葉がいとおしくて、遠い存在に思ったことなどなかった。自分で思っていることが言葉で表現できず、理解してもらえないことが悔しかった。語彙力が足りない。もっと、もっと表現するための語彙力が。
 葛藤を抱きつつ、一週間が過ぎた。最終日。彼女は、とても寂しい。帰りたくない。何度もそう言ってくれた。しばしの別れを噛み締め、どこか重いその空気に酔いそうだった。初めは不安だった。何もかも。でも、こうして今、わかりあえている。確信をもってそう思えた。
 彼女の両親が迎えに来た。彼女は気丈に振るまっていたけれど、目が赤かった。
 「ありがとう。」
 その五文字と温かいハグを残して足早に車に乗ってしまった。彼女の母親が
 「涙を見られたくないのよ。またね。」
 と笑って手を振ってくれた。
 この心にある、気持はなんだろう。再開した時に、この気持が伝わるように、少ししか時間はないけれど、成長した私になってまた目まぐるしい一週間を迎えたい。
(高等部1年生 女子)