「球技大会」

「球技大会」
全ての力を出し切った。
いつもと違う自分がそこにはいた。
昨年に引き続いて女子ソフトボールになった高3が自分だけだと聞いて、私はかなり焦った。チーム決めをしたものの、両チームのメンバーの中で練習内容を考えることができる人は私だけだった。どう練習すればみんなは打てるようになるのか、ボールを捕れるようになるのか。そして、ソフトを心から楽しんでくれるのだろうか。考えた末に出た答えは、大会直前まで両チーム一緒に練習をするというものだった。ソフトボールは、学校の体育でやる機会が多いとは言えない。でも私は、この球技大会で、みんなに「ガチ」になってほしかった。だから私は、キャッチボールを敵味方関係なくペアを組んでやってもらったり、チームをバラバラにして混合で試合をして、敵の情報を盗めと言ったりした。作戦会議の時間を一日に何回もとった。みんながソフトに真剣に挑んで、男子ソフトにも負けないような熱い試合をしたいと思ったのだった。
当日。一試合目は18対11で勝ち、二試合目は8対10で負けた。一勝一敗。このスコアからもわかるように、みんなよく打ち、捕り、投げ、走り、転び、叫んだ。それは、黄色チームも水色チームもどちらにも言えることだった。きっと、メンバー全員があんなに叫んだのは女子ソフトだけだと思う。
試合が終わって自分のチームを集め、みんなの弾ける笑顔、そして後輩の、「先輩がキャプテンで本当に良かったです。」という言葉を聞いた時、私は涙が出そうになった。そして、その瞬間頭の中を過ぎったのは、一年前、同じ言葉を高3の先輩に言った自分だった。
たぶん先輩と私はその時同じことを思っただろう。自分たちの役目は終わった、と。
(高等部3年生 女子)