「はぁ…。」夜ブレイク直前の高一の合唱を聴き終わり、思わず溜め息がもれた。どちらのクラスも完成度が高い上に、とても楽しそうな笑顔で歌っていた。高一の合唱を初めて聴いて、それまでの余裕は一瞬にして消え、これ以上ない程の焦りを感じていた。
ブレイクに入りクラスに戻ってみると、みんなも同じ気持ちだったようだ。誰も笑っていなかった。それでも、そんな張りつめた空気を変えてくれたのは、やっぱり指揮者だった。常に私達を励まし続け、クラスを一つにまとめてくれた。一番辛い役だったはずなのに。弱音を一切吐かず笑顔で支えてくれた彼女を、心からすごいと思った。そんな彼女のお陰で、ブレイクが終わる頃にはクラスの雰囲気が少し変わっていた。表情はまだ若干硬かったが、「最後の合唱、楽しもう!」「高二の意地を見せよう!」といった前向きな声が聞こえた。
そしていよいよ高二の二の出番。控え室でみんなで手を合わせ、かけ声とともにステージへ飛び出した。その後の記憶は正直言ってあまり覚えていない。ただ、三分半ある曲がたった三十秒程度に感じられた。『あっという間』というのが素直な感想だった。それでも、演奏が終わった後は自然と笑顔がこぼれ、このクラスで合唱をすることができて本当に良かったと心から思った。
結果は翌日の夜に発表された。目指していた歌声賞と、予想していなかった校長先生特別賞を頂いた。クラスで喜びを分かち合いながらも、総合優勝はおそらく高一だろうと誰もが思っていたに違いない。そんな中でいよいよ総合優勝の発表。呼ばれた名前は…高二の二組だった。一瞬何が起こったのか分からなかった。二年二組はオープンデイとの二冠を見事達成できたのだ。
新たな三枚の賞状と思い出が、教室に追加された。
(高等部2年生 女子)