オックスフォードでのアウティングは本屋を覗いたり、科学史博物館に行ったりと、なかなか面白かったが、一番印象に残っているのは、栞にも載っていた、『The Grand Cafe』である。
Tent Marketでパイやサンドウィッチを食べたりして早めの昼食を済ませ、集合時間までまだ時間があるので軽く一杯、と仲間三人と連れ立って件のカフェへ行った。正面から見ると本当にイングランド一の老舗カフェなのかといった、どうにも垢抜けない感じがしたが、いざ中へ入ると、なるほど、いかにも老舗といった雰囲気だった。机や柱、鏡の縁等にも金色の装飾が施されていて豪勢な感じがした。
席に着きメニューを見ると、表にはスコーンと一緒になったランチセット、裏はコーヒー、紅茶の単品が書いてあった。しかも、それぞれ十数種類、紅茶の方には一つ一つに説明が付してあった。店員が注文を取りに来て自分はダージリンを、M.Sはアッサムを、そしてH.SとK.Tは十ポンドもするブルマンを頼んだ。自分がダージリンを選んだのは、そのスッキリとした味と明るい色合いが昔から好きだからである。渋いものはあまり好みではない。
注文したものが届き、男四人の中途半端なティータイムが始まった。茶をカップに注ぎ、一口すすると……渋かった。これがダージリンのはずは無い、しかし店員が間違えるはずが無かろうと半信半疑でM.Sに頼み、一杯もらうと……紛れも無いダージリンだった。老舗でもやっぱりイギリスだなぁと男四人で一しきり笑い、改めてダージリンを賞味する。美味い、やはり紅茶の王様と呼ばれるだけの事はある。この紅茶は軟水の方がおいしいと聞くがそんなことは無い。スッキリとした味わいがしっかり通っていて今までのどんな紅茶よりも良かった。
M.Sのアッサムはやや渋みがあるがミルクティーとして飲むと、紅茶の渋みと牛乳の甘みが交わり、非常にまろやかな味となる。これには日頃大食家で、味を気にしているのだろうか、という彼も同意してくれた。
さて、残る二人のブルマンだが、こちらの紅茶と引き換えに一杯半ほど飲んだが、初めて口にしたとき、とても驚いたのを覚えている。苦くないのである。ブラックなのに。まさか、と思って続けて飲むが、苦みも酸味もすっかり身を潜めて、非常に口当たりが良い。とてもコーヒーとは思えなかった。さすがに十ポンドもするだけのことはある、としきりに感心した。
その後は、皆で茶やコーヒーを飲みながら馬鹿話や政治談義で盛り上がり、一時間ほどとても濃密な時間を過ごした。もし機会が有ればぜひとも再び行きたい場所である。
ちなみに、途中で小腹を空かせた男共が、隣で昼食をとっていた女子達から余ったスコーンのおすそ分けを頂いたのは余談である。
(高等部2年生 男子)